★★★★☆
あらすじ
1940年代の中国で、博打により全財産を失った男とその家族の半生。
感想
激動する中国で、時代に翻弄されながら生きる主人公とその家族の姿が描かれる。まずは湿度の高さを感じるいかにもアジアといった映像が美しい。ロケなのかセットなのか分からないが、素朴な中国の光景が見られる舞台や小道具もグッとくるし、大量の人間が映し出される人海戦術の戦争シーンも迫力があり、映像を観ているだけでも満足感がある。
主人公は博打で全財産を失った男。そんな人間はそのまま破滅に向かって一直線だろうと思ったのだが、意外にもそこで持ちこたえて心を入れ替え、家族のために生きるようになる。10年、20年と時を重ねる中で良い事と悪い事が次々と訪れ、その度に喜んだり悲しんだりする彼らの悲喜こもごもの様子を見ていると、これこそがまさに「人生」なのだとひしひしとその重みを感じた。そしてどんな時でも彼らを助けてくれる誰か親切な人がいた事も忘れてはならない。いつの時代もどんな状況でも善人はいるものだ。
そんな彼らの人生に大きな影響を与えているのが、変わりゆく中国の社会情勢だ。家族の不幸に色々と絡んでくるので、どことなく体制に対する批判を感じ取ることが出来るのだが、それを咎めてしまうと、なんとなく咎めた本人が体制の悪い部分を認めたことになってしまいそうな仕組みになっていて巧妙だ。声高に主張することなく、あえて淡々と描くことで体制の悪い部分を浮き彫りにしている。それでも中国では上映禁止になったようだが。
共産体制に変わった中国。最初は牧歌的な雰囲気だったのに、人々がいつのまにか周囲の目を気にするようになってしまっていたのが印象的だった。街の様子もほとんど変わることがなく、人々の暮らしぶりが良くならず停滞してしまっている事がよく分かる。家の中で変わったところと言えば、毛沢東やプロパガンダのポスターが貼られている事くらいだった。それでも人々は生きていく。
人生を感じて、しみじみとした余韻に浸ってしまう映画。
スタッフ/キャスト
監督 チャン・イーモウ
脚本 ユイ・ホア/ルー・ウェイ
原作 活きる (中公文庫)
出演 グォ・ヨウ/コン・リー/ニウ・ベン
撮影 リュイ・ユエ