★★★☆☆
あらすじ
自宅に妹が居候を始めたことにより、生活がおかしくなっていくセックス依存症の男。
感想
主人公はニューヨークの高級マンションに住むエリートサラリーマンで、セックス依存症の男だ。娼婦やバーで会った女性と夜な夜な関係を持ち、さらには風呂場や職場のトイレで自慰をして、暇さえあればネットのエロ動画を見ている。
かなり度を越してはいるが、これが中学生男子だったら普通だったりする。ただし主人公は全然楽しそうではなく、常に悲哀漂う顔をしている。だから依存症なのだろう。もしこれが満喫している様子なら、何も問題ない行為とされるのかもしれない。同じことをしていても本人の気持ち次第で病気とされたりされなかったりするのだとしたら興味深い。
そんな日々を送る主人公の家に妹が転がり込んでくる。冒頭から彼の家の留守電に、別れた恋人のような未練がましいメッセージを何度も残していた女性が妹だったとは驚いたが、つまりはそういうことなのだろう。風呂場で裸を見られても平然としていたり、主人公が眠るベッドに妹が潜り込んできたりと、多分に近親相姦の匂いが漂っている。
そして主人公の依存症は、この妹との問題に起因しているらしいことが段々と伝わってくる。歌手の妹がバーで「ニューヨーク・ニューヨーク」を歌い、その歌詞に妹と距離を取って新たな人生へ再出発しようとした自分を重ねたのか、主人公が静かに泣くシーンは印象的だった。満たされない想いを埋めようとした結果、依存症になってしまった。
だから彼の性的行為は恋愛とは切り離されている。この映画では赤が恋愛の象徴として使われているが、主人公と関係を持つ時、女たちは身につけた赤い衣装や貴金属を外す。だから赤いネックレスをつけたままの職場の女性とはうまく関係を持てなかった。妹との関係で、そうなってはいけないと常にストッパーをかけてきた影響だろう。その後の自棄になった主人公の、なんでもありの行けるところまで行こうとする暴走ぶりには闇の深さを感じてしまった。
多くを語らない静かな演出で分かりにくさがあるが、それでも最後まで見ることが出来てしまう不思議な力を持った映画だ。見るたびに新たな発見がありそうだ。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 スティーヴ・マックイーン
脚本 アビ・モーガン
出演 マイケル・ファスベンダー/キャリー・マリガン/ジェームズ・バッジ・デール