★★★☆☆
あらすじ
恩義のあるボスが殺された探偵事務所の助手は、その復讐を果たすために彼が掴んでいた真相を探り始める。144分。
感想
殺された探偵事務所のボスが追っていた真相を、その助手が探る物語だ。飛んだり跳ねたりの派手なアクションはほぼなく、地味に聞き込みや張り込みを行なうオールドスタイルな探偵ものとなっている。1950年代のニューヨークを舞台にしており、映像や音楽もクラシックで洒落た雰囲気があってなかなか悪くない空気感だ。
主人公は抜群の記憶力を持ちながらもトゥレット症に悩む男だ。ハードボイルドな物語にこういう症状を織り込んでくるところが現代ぽいが、ガンガンと再開発を進めるニューヨークの街に生じた歪みのようなものも表わしているのかもしれない。この症候群の症状は即興のジャズみたいなものだ、という解釈は興味深かったが、そう思っていいものかどうかはよく分からない。
ボスの仇を取るために殺した相手を探していただけの主人公だったが、やがて巨悪の存在に気付いていく。その過程を楽しみながら見ていたのだが、終盤に複雑な人間関係が明らかになって、若干ややこしくなってしまった。2時間越えの長い映画で、ちょっと疲れてきたところでこれは、なかなかしんどいものがあった。ただシンプルな話だったらすぐにバレてしまって巨悪にも陰謀にもならないだろうから、そのバランスは難しいところだ。
そしてついに主人公のボスが掴んでいたネタが判明する。だが、その相手が汚い手口で権力を私物化したり、貧しい人々を追い出したりしている中でそれ?と拍子抜けしてしまった。それがバレたところで何が問題なのか、いまいちピンと来ないものがあった。
これは当時の人種的なタブーだったのかもしれないし、そうなった経緯が問題だったのかもしれないが、相手はすでに亡くなっているのだから、いくらでも美談に仕立て上げることだってできたはずだ。逆にこれを利用することも出来たかもしれない。何もその当事者を殺す必要はないし、このために主人公のボスをはじめ何人も死人を出すようなことでもなかったような気がしてしまった。
監督・主演のエドワード・ノートンがこの物語にいろんな思いを込めていることは伝わってくるのだが、その思いが強すぎて、物語がいびつになってしまったような印象を受けた。彼の演技も良かったし、途中まではなかなかいい感じだっただけに惜しい。
構想20年…名優エドワード・ノートンが温め続けた“私的アメリカン・ノワール”映画とは?|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
スタッフ/キャスト
監督/脚本/製作/出演 エドワード・ノートン
原作 マザーレス・ブルックリン (ミステリアス・プレス文庫)
出演 ブルース・ウィリス/ググ・バサ=ロー/ボビー・カナヴェイル/チェリー・ジョーンズ/アレック・ボールドウィン/ウィレム・デフォー/マイケル・ケネス・ウィリアムズ/レスリー・マン/イーサン・サプリー/ダラス・ロバーツ/ロバート・ウィズダム/フィッシャー・スティーヴンス
音楽 ダニエル・ペンバートン
撮影 ディック・ポープ