★★☆☆☆
あらすじ
人を喰らう種族・喰種(グール)の臓器を移植された大学生は、自分の一部がグールになったことに気付き、苦悩する。
窪田正孝主演、清水富美加、鈴木伸之、大泉洋ら出演。漫画原作。119分。
感想
人を喰らう種族、グールがいる世界が舞台だ。人を襲い、栄養を取るという意味ではヴァンパイアと同じなので、なにも人を喰らうグロい設定にしなくてもヴァンパイアで事足りるのにと思ってしまうが、ショッキングなインパクトが欲しかったのだろう。
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ただ逆に、やってることはほぼ同じなのに、ほとんど嫌悪感を与えないヴァンパイアの設定のスマートさに感心してしまうのは皮肉だ。さすがワールドクラスの怪物だ。
ひょんなことから体が半分グールになってしまった主人公は、普通の食べ物を受け付けなくなり、人肉を欲している自分に苦悩する。半分別の生き物になってしまったのだから他にもいろいろと戸惑うことはありそうなものだが、とにかく食べ物で苦しむのはリアルではある。食べなければ生きていけない。
ただ、人肉しか食べられないというのなら食べるしかないだろう。だから主人公がずっと悩んでいるのは理解し難かった。彼が食べるべきか食べざるべきかと、延々と苦しむ様子をずっと見ているのは苦痛だった。くどい。
その後主人公はグールのコミュニティに加わり、彼らの辛い現状を知るようになる。人間に敵視されて居場所はなく、人肉を手に入れるのも簡単ではない。社会の片隅でひっそりと暮らしている。
ただ彼らも人間並みの知性はあるのだから、人間のようにもっと合理的な社会を作ればいいだけだ。社会的分業をして、人肉だって彼らのスーパーで売ればいい。なぜ各自で食料を確保する個人戦をやっているのだろうと不思議に思ってしまう。
もっと人間とグールのバチバチな戦いが繰り広げられるのかと思っていたが、意外にもグールの苦悩や葛藤を描くヒューマンドラマ(ヒューマンじゃないけど)だった。それでも見応えがあれば良かったが、感情移入できないほど中身が薄い。主人公は「デビルマン」や「ブレイド」みたいに両者の側面を持ったキャラであるが、よくあるようなジレンマも感じられない。完全にグール側にいるように見える。
このヒューマンドラマの裏側で、人間によるグール探しも行われている。だが描写不足で、彼らが何をやっているのかが正直よく分からなかった。若いエリート捜査官役の鈴木伸之の滑舌が悪く、セリフが聞き取れないことが多いのも辛かった。途中まで相田翔子演じるグールがターゲットになっている事すら気付かなかった。彼女が夫を殺されたとは思えない平然とした振る舞いをしていたのも大きい。
彼女が捜査官に狩られ、主人公は怒って全面対決となる。それまでヒューマンドラマ風だったのに特訓が始まったりして、急に(ダーク)ヒーロー映画みたいになってきた。ただグールの苦しみも人間の悪辣さもまったく描き足りず、どちらを応援するべきかなのか決めかねてしまう。どちらが勝っても受け入れる中立的な立場を取らざるを得ず、当然、対決は盛り上がらない。
この対決の時に、エリート捜査官が何の説明もなくデカい肉の塊みたいな武器を持っていて、なにそれ?と笑ってしまった。唐突すぎる。この映画は色々と説明不足で、グールがモンスター化する理由やそのメカニズム、なぜ目が変なのか、なぜマスクが必要なのか等、まったく教えてくれないままに進行するのでモヤッとする。大泉洋演じる捜査官がなぜグールみたいに体が変化するのか、結局主人公の食糧問題はどうなったのかもよく分からない。
典型的なヒーロー誕生物語で、流れは間違っておらず雰囲気もあったが、冗長で中身の薄い展開にかなり退屈した。続編もあるが別にいいかなと思ってしまった。原作漫画を読んだ人と、実在するのかは知らないが、グールならきっと楽しめる映画なのだろう。
スタッフ/キャスト
監督 萩原健太郎
脚本 楠野一郎
原作 東京喰種トーキョーグール 1 東京喰種トーキョーグール リマスター版 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)
出演 窪田正孝/清水富美加/鈴木伸之/桜田ひより/大泉洋/村井國夫/小笠原海/白石隼也/相田翔子/栁俊太郎/坂東巳之助/佐々木希/浜野謙太/古畑星夏/前野朋哉/ダンカン/岩松了
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