★★★☆☆
あらすじ
湘南の暴走族のメンバーたちは、横浜の暴走族が進出してくるという噂を耳にする。90分。
感想
織田裕二、清水美沙がオーディションで選ばれてデビューを果たし、江口洋介、竹内力ら今も活躍する役者たちが出演している事でも有名な映画だ。特に織田裕二はこれがデビュー作とは思えない堂々とした演技で、後にたくさんの作品で主演を務めることになるのも納得の存在感だった。この映画の主演は江口洋介だが、実質彼が主人公と言っても過言ではない。
それから、今とは違う爽やかな顔立ちの竹内力が演じるのは、敵対する暴走族のリーダーだ。爽やかすぎて暴走族ぽくないなと思っていたのだが、喧嘩シーンになると急に狂気を帯びだして、後にVシネマの帝王と呼ばれるだけのことはあるその片鱗を見せている。
登場人物たちのファッションだったり、暴走族が衣装を揃える感じだったり、「やんぴこんぴ」とかいう謎の言葉を使って悦に入っている様子だったり、時代を感じる野暮ったさのある映画だ。冒頭の呑気な音楽も80年代ぽさがある。そんな中、暴走族のメンバーのひとりがいつもマスクをしていて、偶然にも現代風なのが面白い。しかも、昔の映画で見かけるマスクというと大抵いわゆるアベノマスクみたいな小さなガーゼマスクなのだが、この登場人物は今のマスク警察もきっと納得のサイズ感で、何の違和感もない。
しかし、マスク姿のヤンキーというのは定番な印象があるが、彼らは何のためにマスクをしているのだろう。顔バレしないためなのか、排気ガスを防ぐためなのか。彼らに聞けばいろいろな理由を言うのだろうが、深層心理を探ると案外、実はみっともないことをしている自覚があって、その恥ずかしさを隠すための仮面のような役割を果たしているのかもしれない。
いわゆる暴走族の抗争を描いたよくあるヤンキー映画で、こういうのを見るといつも「彼らは何のために抗争しているのか?」という疑問が湧いてくるのだが、主人公も同じようなことを言っていてちょっと安心した。確かにバイクで走るのが好きなのなら互いに邪魔にならないように走ればいいだけで、何もケンカする必要はないはずだ。
考えてみれば、他のジョギング好きな人たちやキャンプ好きな人たちが徒党を組んで抗争をしているという話は聞いた事がない。だからきっと暴走族はバイクが好きなのではなくて、ただ目立ちたいとか別の理由でやっている人間がほとんどなのだろう。
そんな主人公の言葉に共感したのに、結局は暴走族同士の喧嘩になって、よくあるいつものヤンキー映画になってしまった。そんなことを望んでいないのに戦わざるを得ない虚無を感じさせるわけだが、どうせなら主人公の想いを汲んだ方向に話が進んで欲しかった。一応は喧嘩でない形で決着をつけようとするのだが、それはそれでよくある話だった。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 山田大樹
脚本 和泉聖治
出演 江口洋介/織田裕二/村沢寿彦/我王銀次/清水美砂/杉浦幸/杉本彩/翔/小沢和義/竹内力/阿藤海/梅津栄/国広富之*/松崎しげる*
*友情出演