★★☆☆☆
あらすじ
クリスマスに東京で連続爆破テロが発生し、刑事は犯人を追う。
西島秀俊、石田ゆり子、佐藤浩市、中村倫也ら出演。99分。
感想
テロ予告があった現場を取材に訪れたテレビ局員が、主婦とともに事件に巻き込まれるところから物語は始まる。しかし、この若いテレビ局員がスッと事件に入っていくことに違和感があった。
本当に爆弾らしきものがあったとはいえ、もともとどうせガセだと信じていなかったのだから、そんなに簡単に切り替えられるものではないだろう。すぐに当事者として振る舞うのではなく、もう少し日常から非日常に移行する際の戸惑いが欲しかった。瞬発力高く状況に適応してしまう登場人物に、見ているこちらが適応できない。
最初の目的を果たした彼らは、犯人の指示に従って次の現場に向かう。この移動の間に、リードする主婦に何が起きているのか詳しい事情を聞きそうなものなのに、若い記者は何も聞かない。しかも次の指示をこなした後は、急に打ち解けて身の上話などを始め、主婦に抱きしめられたりする謎の展開だ。
事情を色々知っているだろう主婦が、その後ほったらかしにされる展開も不可解だ。序盤の導入部分が色々おかしくて、すんなりと物語の世界を受け入れることができない。
その後は、テロ事件に関わる周辺の人々の様子が描かれていく。だが、世間を翻弄する犯人の様子が描かれるわけでも、切羽詰まって犯人を必死に探す刑事の様子が描かれるわけでもなく、ただダラダラと時間が過ぎていくだけだ。緊迫感も何もない。
そんな中で、広瀬アリス演じるOLの名探偵ぶりは面白かった。男に適当な言い訳で会食を体よく断られただけなのに、私達に嘘を付くなんて怪しい、あいつが犯人に違いない、と思ってしまうポジティブぶりだ。しかもほぼ正解なのだから笑ってしまう。
そんな調子で、ただ流れに身をませていたら、自然と犯人にたどり着いてしまった、という印象の物語だ。ただ具体的なところは曖昧で、雰囲気だけで察しなければならない。スリルもサスペンスもなく、物語が進行するのをただ見守るだけだ。
終盤の佐藤浩市と石田ゆり子演じる一般人の二人が、刑事そっちのけで勝手に話をまとめて行動するシーンも笑える。刑事も素直に彼らに従う。
渋谷の爆破シーンやレインボーブリッジの水しぶきのシーンの映像は、見ごたえがあってかなり良かったのだが、肝心のストーリーが全然駄目だ。なぜか舞台みたいな役者陣の演技も、大げさな音楽も白々しい。戦争とかデモとか忖度するマスコミとか、馬鹿な大衆とか非正規雇用の問題とか、世の中になにか物申したいらしいのは分かるが、結局何を言いたいのだかさっぱりわからない映画になっている。
スタッフ/キャスト
監督 波多野貴文
脚本 山浦雅大
原作 サイレント・トーキョー: And so this is Xmas (河出文庫)
出演
石田ゆり子/西島秀俊/中村倫也/広瀬アリス/井之脇海/勝地涼/毎熊克哉/加弥乃/白石聖/庄野崎謙/金井勇太/大場泰正/野間口徹/財前直見/鶴見辰吾
音楽 大間々昂
撮影 山田康介
And so this is Xmas - Wikipedia
