★★★★☆
あらすじ
第二次大戦末期のドイツ。人員不足で徴兵されるも、前線に連れて行くにはまだ未熟で足手まといになると判断され、地元の戦略的に意味のない橋を守るという名目で置いて行かれた7人の少年たち。西ドイツ映画。
感想
序盤は戦時下での少年たちの暮らしが描かれていく。母親を手伝う大人びた者、まだ子供みたいに無邪気な者、恋をする者、失恋する者、親との確執を抱える者と皆それぞれだ。戦時下でもそれぞれの青春時代を過ごしている。
だがそれも召集令状が皆に届いたことで終わる。顔色が曇る親や教師とは対照的に、無邪気に喜ぶ少年たちの姿がなんともいえず切ない。戦争の現実を知らず、勇ましい幼稚なロマンに胸躍らせている。明日の宿題をして損をしたとか言ってしまうような、まだまだ未熟な子供たちだ。
ここまでは戦争映画でよく見るプロットだが、ここからの展開が面白かった。前線に連れて行くのは足手まといだと判断された少年兵たちは残され、その名目として戦略的に何の価値もない橋を守る役割を与えられる。この設定自体が寓話的で何かのメタファーのようでもある。それに「ホーム・アローン」的な喜劇にも、白虎隊的な悲劇にも展開できそうな物語の可能性が感じられる。良く練られているなと感心したが、実話だったことに驚かされた。
物語は悲劇的な結末へと向かっていく。その序盤の、橋を渡って撤退してくる兵士らの負傷し体を欠損した瀕死の姿や、部下を居丈高に怒鳴りつける上官の様子は、少年たちに全くカッコ良くも勇ましくもない戦争の現実を突きつける。彼らの興奮で上気した顔が少しずつ真顔に変わっていく。
事情を察して彼らに家へ帰るよう説得しに来た大人に対し、それでも軍国少年マインドで「非国民!」と罵倒し嘲笑する姿には、洗脳されてしまった者の哀しみがあった。この少年たちへの指令は、ある意味では負け戦に子供たちを連れて行くのは忍びないという大人の温情だったと思うが、それに気付けないほど彼らはまだ全然子供だったということだろう。大人たちの建前を真面目に受け取り、純粋まっすぐな気持ちで応えようとしてしまった。
最初は勇敢に戦うも、とめどなく続く攻撃にやがて少年たちが「もう帰りたい」と泣きべそをかき始めるシーンはとても印象的だった。いかにも幼稚な反応だが、過去に戦争が勃発して喝采したほとんどの庶民は、その後同じようなリアクションをして「こんなはずじゃなかった…」と泣きべそをかいたはずだ。日本もそうだった。人間の想像力なんて大したことがなく、実際に起きて見なければ何も理解できないし、分かろうとすらしない。
今、勇ましい気分で戦争をけしかけようとしたり、心のどこかで戦争を望んでいる人たちの未来もきっとこうなる。そして少年たちのように、無意味な戦いで多くの人が死んでいくのだろう。
見る前の想像を大きく上回る面白い映画だった。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 ベルンハルト・ヴィッキ
原作 橋 (1960年)
出演 フォルカー・ボーネット/フリッツ・ヴェッパー/ミヒャエル・ヒンツ/フランク・グラウブレヒト/カール・ミハエル・バールツァー/フォルカー・リヒテンブリンク/ギュンター・ホフマン/コルドラ・トラントフ