★★★★☆
あらすじ
巨人ドラーグ族に母親を殺され、ペットにされてしまった人類オム族の赤ん坊。アニメ映画。
感想
心を病んでしまった人が描くような、荒涼・寂莫としたタッチのアニメーション映画だ。シュールで不条理な世界観は見ているだけで不穏な気持ちになってくるが、それが段々とクセになってくる。登場する奇妙な生き物たちもなんだか愛くるしく見えてきた。
赤ん坊の時に母親を殺され、一人取り残されていたところを拾われて、巨人族のペットになった男が主人公だ。舞台となる星では、人間が巨人族に虫けらのように扱われている。彼の母親が巨人の子供たちに嬲り殺された冒頭のシーンなどは象徴的で、まさに地球で人間の子供たちが蟻を無造作に殺しているのと同じだった。そう思ったら急激に、普段毛嫌いしている虫けらたちの気持ちが理解できたような気がして、猛烈に申し訳ないような気持ちになってしまった。
ペットとして飼われるた主人公は、飼い主の巨人族の娘が勉強する際にいつもそばにいたことで、様々な知識を身に付けていく。そして脱走するのだが、その時に学習道具も一緒に持って行くのが偉い。学ぶことがいかに重要かを分かっている。
やがて野生で暮らす人間集団と合流した主人公は、身に付けた知識を皆と共有しようとするが、なかなか受け入れられない。学問の重要性を理解できるのは学問した者だけで、無知な人間には理解できないというのはもどかしいジレンマだ。何もしなければ格差は広がるし、それを利用して無知な者を騙して搾取することも出来てしまう。
最終的には急激に知識を身に付けて進化する人類に危機感を抱いた巨人族が駆除に動き、人類はそれに抵抗し対決する展開となる。人類的には熱い流れだが、巨人族から見れば、虫けら扱いしていたものに突如襲撃されるなんて、パニック映画級の衝撃だろうなと思ったりした。
昔の映画だし、絵柄が陰気だし、途中で眠くなってしまうかもなと思いつつ見始めたのだが、とても刺激的で最後まで集中して見ることができた。そして、普段とは違う立場で物事を見ることで、色々と考えさせられる映画でもあった。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 ルネ・ラルー
原作 Oms en serie
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