★★★★☆
あらすじ
地球の寒冷化により、動き続ける列車の中で暮らす人々。ある日、劣悪な環境に不満を抱いた最後尾の車両の集団が暴動を起こす。
感想
ニュース音声のみが聞こえるタイトルバックが終わって、列車の中の映像から映画は始まる。これだけで、計画は失敗しちゃったのだなとビジュアル的によく分かり、思わず苦笑してしまう。ほんのわずかな時間で映画の前提となる設定を説明し、すぐに本題をスタートさせるのはさすがだ。詳しく状況が呑み込めたわけではないが、だいたいのことは分かるので、スッと物語に入っていける。
地球の寒冷化により多くの生物が絶滅し、もはや人類は走り続ける列車の中にしかいない設定だ。後部車両には貧しき人々が詰め込まれ、前に行くほど人々は豊かな暮らしをしている。列車の中が端的な社会の縮図のようになっていて面白い。貧しい人々は豊かな人々の暮らしぶりを知ることが出来ず、豊かな人々は貧しい人々に対して無関心。理由は違うが両者とも互いの事を知らないのは結局同じ、というのも何か示唆的だ。
そんな中で後部車両の虐げられた人々は待遇への不満から暴動を起こし、先頭車両を目指す。阻止しようと立ちはだかる敵を倒しながら、前の車両に向かってどんどんと次の扉を開けて突き進む主人公らの動きは、暴動の進捗具合も分かりやすくて良いのだが、単純な直線的行動にどことなく息苦しさを感じなくもない。
そしてついに先頭車両にたどり着き、主人公はボスと対面する。盛り上がりも最高潮かと思いきや、そうはならず真実を知って主人公は打ちのめされてしまう。それにたとえボスを倒し主導権を握ったとしても、住人たちが車両を移動するだけで結局システムは変わらない。独裁政権を倒した革命軍政府が、結局は独裁政権と化してしまうような皮肉を感じてしまった。
それを回避するにはどうすればいいのか?となった時にクローズアップされるのは、次の車両に向かう扉ではない別の扉の存在だ。これが主人公らの車両を移動するだけの直線的な動きに閉塞感を感じていたことの原因なのかもしれない。既存の枠組みの中で考えるのではなく、別の新たな道を探ること。そこに新しい世界が待っている。
希望が湧く話ではあるのだが、必ずしも全員がそう思うわけでないことも良く分かる。エド・ハリス演じるボスが言っていたように、多くの人は自分が置かれた状況を受け入れて生きている。それが虐げられ搾取されるような過酷な立場でも、それでいいのだと甘受している人も多い。そんな人たちにとって主人公たちの行動は迷惑でしかないだろう。余計なことをしてくれるなと。
実際に主人公に乗せられて共に行動した人たちはほとんど死んでしまったし、巻き添えになった人も多い。それに、主人公ですら新しい世界の可能性を受け入れることを躊躇してしまっている。社会を変えるという事がいかに難しいかが良く分かる。この映画のように、本当に事故みたいなことが起きない限り、なかなか成功しないものなのかもしれない。
スタッフ/キャスト
監督/脚本/原案 ポン・ジュノ
製作 パク・チャヌク/イ・テホン/スティーヴン・ナム/チョン・テソン
出演 クリス・エヴァンス/ソン・ガンホ/コ・アソン/ジェイミー・ベル/アリソン・ピル/ジョン・ハート/ティルダ・スウィントン/オクタヴィア・スペンサー/エド・ハリス/ユエン・ブレムナー/ルーク・パスカリーノ/アドナン・ハスコヴィッチ/トーマス・レマルキス
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