★★★☆☆
あらすじ
地下鉄の車両が乗っ取られ、その日たまたま運行司令官を務めていた男は、犯人との交渉窓口を務めることになる。原題は「The Taking of Pelham 123」。
感想
地下鉄の車両を乗っ取り、身代金を要求して立て籠もる犯人と、主人公である運行司令官との緊張感のあるやり取りが描かれる。ただ主導権を奪い合う、手に汗握るような互角の戦いではなく、ずっと犯人のターンではあるが。主人公はそれに何とか対応しているという構図が続く。
ジョン・トラボルタ演じる犯人の目的が金であることは明白なのだが、それとは別になぜ彼が怒りをあらわにしているのかは分からない。自分は世の中に不当な扱いを受けたと感じているからなのだろうか。
それから途中で犯人が主人公に罪の告白を迫るシーンがある。あまり本筋とは関係がないような展開で、これもなんのためにそんなことをするのかがよく分からなかった。主人公も犯人と同じで、不当な扱いを受ける被害者だということを示したかったのだろうか。同じような理不尽な扱いを受けた二人だが、その後の行動はまったく違っていたと、対照的に描きたかったのかもしれない。でもどうにもピンと来なくて見当はずれな気がしてしまう。それにこの主人公の罪の告白に、一気に気持ちが冷めてしまった。
この映画の見せ場は、主人公と犯人の息詰まるやり取りなのだろうが、個人的にはそれよりも関係者たちの事件対応の迅速さに目を奪われてしまった。事件発生直後、今から一時間後に高額の身代金を持って来いという犯人の要求に見事に応えることが出来ている。
これがもし日本だったら、事件の一時間後に何も把握していないお年寄りの責任者たちが、わけも分からず役人に連れられてぞろぞろと集まり出すぐらいのスピード感だろう。しかもそれならまだいい方で、一報が入ってもそのままゴルフや宴会を続けてしまう可能性もある。その対応がのちのち非難されても、然るべき指示は出していたのだから問題ない、と特定の人たちに擁護される未来まで見える。
緊迫感の感じられる映画ではあったが、よく考えると普通の事件対応しかしておらず、ラスト以外は大したことは何もしていないよなと思ってしまうストーリー展開だった。他の人質を救うために身代わりで犠牲となった元兵士がまったく顧みられなかったり、車内の様子がたまたまネット中継されていた映像も大して効果的に使われていなかったりと、薄っぺらい印象を受けてしまう映画だ。
スタッフ/キャスト
監督/製作 トニー・スコット
脚本 ブライアン・ヘルゲランド/*デヴィッド・コープ
*ノンクレジット
原作 サブウェイ・パニック (1974年) (Hayakawa novels)
出演 デンゼル・ワシントン/ジョン・トラボルタ/ジョン・タトゥーロ/ルイス・ガスマン/マイケル・リスポリ/ジェームズ・ガンドルフィーニ/ラモン・ロドリゲス/ベンガ・アキナベ/アーンジャニュー・エリス/ゲイリー・バサラバ
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