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「サバイバルファミリー」 2017

サバイバルファミリー

★★★☆☆

 

あらすじ

 ある日を境に突然電気が止まり、社会インフラが機能しなくなってしまった東京で、生活に困った一家は、母方の実家である鹿児島へ自転車で向かうことにする。

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感想

 突然電気が止まったのに、皆が戸惑いながらも会社や学校に向かい、日常を続けようとする姿はリアルだ。この描写は、東日本大震災時の経験から来ているのだろう。だが、なぜ電気が止まったのかを誰も気にしていないのは嘘くさい。

 

 「今何待ち?」とイライラしてしまうことがあるように、人は何かと理由や原因を知りたがるものだ。分からなければ落ち着かず、色々と勝手に想像して誰かと語り合う。それが噂となったり、時にデマとなったりするのだが、それが全然描かれない。

 

 

 そもそもこんな事態なのに、誰も積極的に情報交換しようとしないのが不自然だ。飛行機が飛んでいるかどうかの情報くらいは、本来ならどこかから自然と伝わってくるはずだ。わざわざ空港へ行くまでもないだろう。戦争中だって皆もっと色々知っていたはずだ。

 

 みんなシャイか!と思ってしまうが、目の前の人に訊ねるよりもスマホで調べてしまう時代だから、案外と正しい描写なのかもしれないが。

 

 やがて一家は自転車で鹿児島に向かう。だがここからも色々とおかしい。まずこの距離なのにいきなり初日に道に迷うとかありえない。しばらくはざっくりと西に向かう幹線道路を走ればいいだけだ。なぜ生活道路を行くのか。

 

 さらには、江戸時代ではないのだから、橋がなくて川の中を渡らなければいけない状況なんてまずない、とか自転車は貴重品なのに案外管理は杜撰だよね、とか線路上にいて機関車がやって来たら喜ぶよりまず逃げるだろう、とかツッコみたくなるところが山ほどある。

 

 そんな道中で家族は絆を深めていく。そんなに笑えるシーンはないが、原始的な生活は生きる上での基本であることも教えてくれる。

 

 始めから終わりまでほぼ悪い奴が登場せず、殺伐とした感じがなかったことに違和感があったが、コメディだから敢えて描かなかったのかもしれない。やっぱり日本は治安が良いと海外の人に感心してもらえそうだ。だが殺伐としたリアルな雰囲気の中でくり広げられるブラックなコメディが見たかった気持ちもある。泥棒には止むに止まれぬ事情があった、では甘い。

 

 この他にも、昔のカメラが使えるなら昔の車も使えるだろうとか、まだまだいくらでも気になる点が出てきてしまう。色んな意味で設定がぬるい映画だ。

 

 ただ、作り手が描きたかっただろうことに関してはしっかりと前振りもして描けている。そして何事もなかったかのように元の生活に戻っているラストの空気感は、コロナ禍後の現在を彷彿とさせて味わい深かった。

 

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 矢口史靖

 

出演 小日向文世/深津絵里/泉澤祐希/葵わかな/時任三郎/藤原紀香/大野拓朗/志尊淳/渡辺えり/宅麻伸/大地康雄/菅原大吉/徳井優/桂雀々/森下能幸/田中要次/左時枝/ミッキー・カーチス

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編集    宮島竜治

 

サバイバルファミリー - Wikipedia

 

 

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