★★★☆☆
あらすじ
不倫相手の女性が自殺してしまい、自分を責めて離婚し釧路で一人暮らす弁護士の男。
佐藤浩市、本田翼、中村獅童ら出演。桜木紫乃原作。111分。
感想
釧路でひっそりと暮らす一人の男。過去を悔いて自分を罰するように生きている。しかし、この自分を罰するような生き方というのは誰も幸せにならない。不倫していたことを反省し、妻と離婚し子供とも別れるが、だからといって不倫相手は自殺しているので一緒に暮らすわけでもない。
せめて誰かは幸せになってくれよと思うが、結局皆が不幸になっただけだ。自分を罰するというよりもナルシシズムに浸っているだけにも見える。
そんな男の前に現れた若い女。彼女の存在が世捨て人のように生きる主人公を変えていく、という話なのだが、そんな女を演じる本田翼の演技力がかなり残念だ。アンドロイドかと見紛うような、感情が伝わってこない演技で、映画にかなりの悪影響を与えている。
ナルシシズムに浸る頑なな男の心を溶かしたのは、女の無邪気さなのだろう。しかし家に押しかけ、無理やり上がり込む彼女には、何か裏があるのでは?とか乗っ取り?とか、色々疑ってしまう。本来物語には存在しないはずのサスペンス要素が加わってしまい、無駄に意図をブレさせている。
ただ、それ以外は悪くはない出来の映画だ。中村獅童演じる組織の男はなぜそこまで主人公を買っているのか分からなかったり、本田翼演じる女の男はなぜ面識もない家族が住んでいるだろう彼女の実家を訪れたのか、など腑に落ちない点が色々とないわけではないが、良くまとまっている。
なかでも、再出発する女にレシピを渡すシーンは良かった。生きるという事は食べるという事だ。料理を作ろうと思えるなら頑張れる。
地の果てのような終点の駅は、折り返すときにはスタートの場所になる。そう考えると、遠い場所に逃げ込んだのではなく、実は新たなスタートを切るための準備をしていたと捉えることが出来るのかもしれない。とにかくポジティブに生きることが大事だなと思わせられる。
スタッフ/キャスト
監督 篠原哲雄
脚本 長谷川康夫
原作 起終点駅(ターミナル)
出演
本田翼/尾野真千子/中村獅童/泉谷しげる/和田正人/音尾琢真
音楽 小林武史
