★★★☆☆
あらすじ
世間から恐れられている悪党グループのボスは、作戦中に芽生えた良心が邪魔して黄金の像を盗み出すのを失敗してしまう。100分。
感想
主人公がオオカミなので、擬人化した動物たちが住む世界なのかと思っていたら、普通に人間も登場して意表を突かれた。人間と擬人化された動物が共存する世界が舞台となっている。だがそのおかげで、主人公らが人間たちにビビられまくる冒頭のシーンは、彼らが動物なのに喋るからなのか、それとも悪党だからなのかが一瞬よく分からなかった。
主人公の仲間たちも皆動物で、ヘビにタランチュラ、サメやピラニアがいる。皆物語で悪役にされがちな、嫌われがちな生き物たちだ。周りに悪そうな奴だと見られていると、自ずと悪ぶるようになってしまうステレオタイプの弊害が垣間見える設定だ。
悪ぶっていった主人公が、人を助けることの喜びを知ったことから気持ちに変化が生じていく。犯行に失敗して捕まってしまった主人公らに更生のチャンスが与えられのをいいことに、改心したふりをして更なる悪だくみを目論んでいたのに、本当に善に目覚めてしまう物語だ。ミイラ取りがミイラになってそのまま終わっていたらイイ話すぎて面白みに欠けたが、ちゃんとその後に見せ場が用意されていた。
ただ仲間が、善人になってしまった主人公を非難する展開になんだかモヤモヤしてしまった。主人公に対する彼らの変わらないで欲しい、裏切られたという感情がどうにも悪人らしくない。親兄弟を裏切り、女房子供を泣かせ、友人を利用してこそ悪人だろう。友情を重んじている時点でもはや普通の人と大差ない。
それに善人であろうとしている普通の人だって、ふとしたはずみで親兄弟を裏切ってしまうことも、女房子供を泣かせてしまうことも、友人を利用してしまうこともある。そう考えると、悪人って何?善悪って何?と分からなくなってしまう。善悪は簡単に描けるようなものではない。
ストーリーはすっきりしなかったが、カーブですごい角度に車が傾いたり、空高くジャンプしたり、空中で泳いだりと、どこかルパン三世を思わせるような躍動感あふれるアクション描写は見ごたえがある。登場する車がカッコよかったり、音楽が洒落ていたりと雰囲気も良い。
クールな世界観はいいのだから、説教臭くしないで普通に怪盗もの、それこそルパンみたいな物語にしてくれれば良かったのにと、惜しい気持ちになってしまう映画だ。
スタッフ/キャスト
監督 ピエール・ペリフィル
原作 バッドガイズ1
出演 サム・ロックウェル/マーク・マロン/クレイグ・ロビンソン/アンソニー・ラモス/オークワフィナ/リチャード・アイオアディ/ザジー・ビーツ/リリー・シン/アレックス・ボースタイン/バーバラ・グッドソン