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「あなたと私の合言葉 さようなら、今日は」 1959

あなたと私の合言葉 さようなら、今日は

★★★★☆

 

あらすじ

 仕事に夢中で、独り身の父親の老後も気になる女は、親同士が決めた結婚の相手に断りを入れるため、学生時代の友人にその仲介を依頼する。

 

感想

 冒頭の主人公と友人の電話のやり取りが代表的だったが、劇中のセリフ回しに独特のリズムがあってクセになる。交互に相手の顔をアップにする手法といい、結婚をめぐる父と娘の葛藤という題材といい、どこか小津映画を思い起こさせるような映画だ。おそらくかなり意識しているはずで、パロディみたいなものと言っていいのかもしれない。

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 主人公が婚約者に断りを入れるため、メッセンジャーとして大学時代の友人を送り込んだことから話が思わぬ方向に進んでいく。世慣れているのだか、押しが強いのだか、マイペースなのだかよく分からない主人公の友人を演じる京マチ子が素晴らしかった。なんでもどんどんと勝手に物事を進めてしまう姿が笑いを誘う。そしてそんな中で突然見せた恋心は可愛らしかった。

 

 この友人や主人公を中心に、父親や妹、婚約者など周辺の人物の思いが交錯する様子がコミカルに描かれていく。タイトル通りそれぞれに「さようなら」と「今日は」がある。小津映画的な人情喜劇だが、あまり保守的ではないので、ひねくれた小津映画、とでも形容するのがふさわしいだろうか。

 

 

 主人公はどうするべきか決めかねて、応急処置で様子見をしているだけだったが、テキパキとした友人に引っ張られているうちに自分の道が定まった。それを決定づけた父と娘の会話は、まさに小津映画のようにジーンときた。

 

 劇中で主人公は何度も眼鏡を掛けたり外したりしているが、結婚か仕事かで揺れる想いを表していたのだろう。ラストで眼鏡を掛けてふっと大きく息を吐く彼女の表情には、覚悟を決めて迷いがなくなった清々しさがあった。

揺れる想い 【30th Anniversary Remasterd】

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スタッフ/キャスト

監督 市川崑

 

脚本 久里子亭


出演 京マチ子/野添ひとみ/若尾文子/菅原謙次/川口浩/船越英二/佐分利信/石井竜一/田宮二郎/浦辺粂子/見明凡太朗/潮万太郎/星ひかる/桂小文治/川村淳/三好栄子/倉田マユミ

 

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