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「文学賞殺人事件 大いなる助走」 1989

文学賞殺人事件 大いなる助走

★★★☆☆

 

あらすじ

 地方の文学同人誌に書いた初めての小説が著名な文学賞候補になった男は、受賞を確実なものにするために奔走する。

 

感想

 文学界の欺瞞や草の根で文学活動をする人々の生態を描く物語だ。地方同人誌で活動する人びとが、仲間内でけん制し合い、誰かが抜け駆けすることに怯えている様子はリアルだった。主人公の文学賞受賞の成否が分かった時の皆の反応は酷いなとは思ったが、それが素直な気持ちなのだろうこともよく理解できた。

 

 文学賞候補になった主人公が、金や体を使って審査員を買収しようとするシーンでは、審査員の大作家を演じる由利徹や梅津栄の曲者ぶりが面白かった。この他、ポール牧や山城新伍らの熱演も記憶に残る。

 

 

 この映画では、今ではあまり見なくなったような、いかにもな少しアクの強いおじさん達がたくさん登場する。昔の日本を支えていたのはこういう人たちだったんだよな、と感慨深かった。それから考えると、今のおじさんたちはだいぶスマートになった。とはいえその内実は大してこの頃と変わらなかったりするのだが。

 

 それからあまり関係ないが、主人公の妹を松本典子が演じており、この人いたな、と久しぶりに思い出して懐かしくなった。

 

 全体としては、無駄にエロが多くて下世話な感じは嫌いじゃない。だが、あまり話に深みが感じられず、とても淡白な印象を受けてしまう。先に原作を読んだからだと思うが、ただ原作をなぞっているだけのように感じてしまった。もう少しそれにプラスアルファが欲しかった気がするが、原作を読んでいなければ特に気にならないかもしれない。

 

 クライマックスもどこか中途半端で盛り上がりに欠けた。ペース配分を間違えているようにも感じる。劇中で主人公が書いた小説と同じ私憤が描かれる内幕ものだが、その小説とは違ってこの映画には面白い表現がなかったのだろう。物足りなさを感じてしまった。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 鈴木則文

 

脚本 志村正浩/掛札昌裕

 

原作

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出演

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石橋蓮司/甲斐えつ子/中島はるみ/蟹江敬三/粟津號/小松方正/南原宏治/梅津栄/由利徹/天本英世/ポール牧/ラサール石井/松本典子/杉山とく子/宮下順子/山城新伍/胡桃沢耕史/団鬼六/片桐はいり/筒井康隆

 

文学賞殺人事件 大いなる助走 - Wikipedia

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