★★★★☆
あらすじ
幼い頃に遊郭に売られた女は、やがて先輩女郎が始めた遊郭でお茶子頭を務めるようになる。
感想
序盤に遊郭の一日を紹介するシーンがあるが、客を取るために必死に踊ってアピールし、裏ではバチバチやり合う女郎たちを見ていたら、現代のアイドルグループもこんな感じなのかもしれないなと思ったりした。選ばれたいと必死の女たちと、人気者を手に入れたり、お気に入りを一番人気にしようとする男たち。両者の相乗効果が熱気を生み出す。よく出来たシステムだ。今でも通用することがよく分かる。
前半はそんな遊郭の女たちの日々が描かれるが、中盤以降は事業に失敗したパトロンの再起を助けるために、遊郭を借金のカタに入れた女将を中心とした愛憎劇が繰り広げられる。そんな中で起きた、遊郭で働く女郎たちが女将側につくか、ヤクザ側につくかで対立するシーンは、緊張感があって良かったが、いまいちどういう構図なのかは分かりづらかった。ただその後の覚悟を決めた彼女たちの、矜持を感じさせる気合の入った踊りのシーンは、まるでミュージカル映画のワンシーンのようで迫力と熱気があった。
人間のドロドロとした部分が見える愛憎劇。主人公がちょっとした反発心から取り返しのつかないことをしてしまい、後悔する様子も人間味があってリアルだった。人は簡単に悪にはなり切れず、善と悪の間を行ったり来たりするものだ。女優らの気合の入った演技も良くて、女将を演じたかたせ梨乃の最後のシーンなどは、美しいというよりもカッコ良さを感じてしまった。
ただ、主人公とヤクザの親分が対峙するシーンで、使われた刀の演出がショボ過ぎたのはちょっと冷めた。あれは全然刺さっているようには見えなかった。そしてその後の南野陽子の演技も下手すぎて、逆に面白かった。それまで彼女は主人公とヒリヒリするような対決シーンなどで好演していたので、急にどうした?となってしまった。これは演出やセリフが悪かったかもしれない。
盛り上がって来る度に、毎回誰かが余計なことをして話の腰を折る展開だったが、逆に言えば全然先が読めない展開という事で、予測不能で面白かった。男と女では大事にするものが違い、そして優先順位が違う事もある。甲斐性のなさそうなダメ男に思われていた風間トオル演じる主人公の恋人が、最後に男気のある行動をとったのが意外だった。妙に説明的なセリフが多くてクドく感じる時もあるのだが、逆に言葉少なに状況だけで示唆するような上手い演出もあって、なんだかどう評価していいのかよく分からない感じだが、総合的に見れば案外バランスが取れた映画と言えるのかもしれない。
スタッフ/キャスト
監督 関本郁夫
出演 かたせ梨乃/斉藤慶子/南野陽子/鳥越マリ/本田博太郎/中尾彬/西岡徳馬/風間トオル
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