BookCites

個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「われらが背きし者」 2016

われらが背きし者(字幕版)

★★★★☆

 

あらすじ

 妻と共にモロッコで休暇を過ごす男は、現地で知り合ったロシアのマフィアの男からUSBメモリを託され、帰国後、英国諜報機関MI6に渡すよう頼まれる。

 

感想

 序盤は、世間知らずの大学教授の主人公が、ロシアのマフィアに騙され、犯罪に利用されてしまう物語なのかと冷や冷やしてしまった。だが実際は、組織が代替わりして身の危険を感じたマフィアの男が、家族と共に亡命しようと必死に主人公にすがりついていたことが分かってくる。

 

 しかし身の危険を感じる状況だったにもかかわらず、マフィアの男は何事もないかのように派手に娘の誕生日パーティーを開いたりしていて強心臓だ。だがそうやって普段通りの姿を見せておかないと、身内である組織の人間たちから怪しまれてしまうからなのだろう。さすがに組織の中でのし上がった男だけはある。したたかだ。

 

 

 この粗野に見えて実は繊細で注意深いキャラクターを、ステラン・スカルスガルドが見事に演じている。めちゃくちゃ恐そうなのだが嫌いになれない。

 

 そんな彼を助けることになったユアン・マクレガー演じる主人公は、頼りなさげに見えていざとなると男気を見せる不思議な男だ。正義感が強いのか、そのためだったら相手が誰であろうと黙っていないし、銃を握ったこともなかったくせに味方を助けるために一人で敵陣に乗り込んでいく。勇ましすぎて逆に、こいつスパイか?と疑われるのではないかと心配してしまった。

 

 そんな二人に加えて、私憤から上司の許可を得ず勝手に動くMI6の諜報員が絡み、マフィア組織の監視の目をかいくぐりながらの、亡命に向けた緊張感のあるやり取りが繰り広げられる。早く機密情報を手に入れたい諜報員と、切り捨てられることを恐れ、家族の安全を最優先に出来るだけ情報開示を先延ばしにしたいマフィアの男の攻防は見ごたえがあった。

 

 亡命を望むマフィア、諜報員、主人公は、それぞれが強みや弱みを持つ不思議な関係の運命共同体だ。そんな微妙なパワーバランスの中で、上層部に勝手な行動がバレて意気消沈する諜報員を主人公が叱りつけるシーンがあったりして面白かった。プロよりも一般人が超やる気になっている。

 

 静かだが緊迫感のあるシーンが続き、手に汗握りながら前のめりで見入っていたのだが、終盤の派手な銃撃戦で少し気勢がそがれてしまった。最後にドンパチやって盛り上げたかったのだと思うが、そんなことをせずにそのまま息詰まるサスペンスを続けてくれた方がズシリと心に響いたような気がする。

 

 とはいえ、手放しでは喜べない少しビターなハッピーエンドは、なんとも言えない余韻を残す。冷え気味だった主人公の夫婦関係も修復のきざしが見え、彼が敢えて危険を冒したことは間違いではなかったという気にさせてくれる。

 

スタッフ/キャスト

監督 スザンナ・ホワイト

 

脚本 ホセイン・アミニ

 

原作 われらが背きし者 (岩波現代文庫)

 

製作総指揮 ジョン・ル・カレ/オリヴィエ・クールソン/ロン・ハルパーン/ジェニー・ボーガーズ/テッサ・ロス/サム・ラヴェンダー

 

出演

bookcites.hatenadiary.com

ステラン・スカルスガルド/ダミアン・ルイス/ナオミ・ハリス/ジェレミー・ノーサム/マーク・ゲイティス/ヴェリボール・トピッチ

 

音楽 マーセロ・ザーヴォス

 

編集 タリク・アンウォー/ルチア・ズケッティ

 

われらが背きし者(字幕版)

われらが背きし者(字幕版)

  • ユアン・マクレガー
Amazon

われらが背きし者 - Wikipedia

われらが背きし者 【字幕版】 | 映画 | 無料動画GYAO!

 

 

bookcites.hatenadiary.com

bookcites.hatenadiary.com