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「赤ちょうちん」 1974

赤ちょうちん

★★★☆☆

 

あらすじ

 一晩泊めてやった少女と同棲することになった若い男。かぐや姫の名曲「赤ちょうちん」を映画化した作品。

 

感想

 かぐや姫の名曲「赤ちょうちん」を映画化した作品だ。ただ、歌の世界を映像化したというわけではなく、歌詞で強烈に印象に残る「キャベツばかりをかじってた」シーンもない。歌から想像するよりも二人は貧乏そうに見えなかったし、そこまで関係が発展するとも思っていなかったので、かなり意外な物語に仕上がっている。

 

 でもこの歌はすでに歌詞を聴いただけで情景が浮かんでしまうような、もうそれだけで見事に完結している曲なので、単純にそれに沿った物語にしてしまうと安いカラオケ映像みたいになってしまいそうだ。作り手としてもそんなことをしてしまったら負け、みたいな気持ちになるはずだ。

 

 

 知らない男の家に一晩泊めてもらう女というのもなかなかだが、それがきっかけとなって若い男女は一緒に暮らし始める。何度か引っ越しを繰り返し、その度に何か事件がが起きる。そして二人の関係も少しずつ変化していく。引っ越しは人生のステージが変わる分かりやすい出来事なので、それを上手く利用している。

 

 当時の引っ越しや住まいの事情を知るにも良い映画だが、大家が勝手に前の住人を部屋に上げてしまうのはなかなかの驚きだった。家族や親せきを名乗る人間でも抵抗があるのに、以前住んでいた住人なんて全くの部外者、赤の他人なわけで、そんな人が帰宅したら部屋で寝ていたとか恐ろしすぎる。主人公たちが抗議するわけでも追い出すでもなく、困惑しつつも数日を一緒に過ごすのもよく分からない。それだけ当時は他者との関係が大らかだったということなのだろうか。

 

 引っ越しを繰り返す中で、火葬場や余命半年の男、赤ん坊の取り違えや窒息死、一家心中など、不安や恐れを掻き立てるような負のイメージが付きまとう出来事が多く登場する。人生は「かなしいこと」で溢れている。これからそんな世の中を生き抜いていかなければならない若い男女の心細さのようなものが伝わってきて、それが題材となった歌と共通する部分と言えそうだ。

 

 そういうことが積もり積もって秋吉久美子演じる女は病気になってしまったのだと思うが、あまりに唐突な感じがしたし、男が一瞬で察して泣き崩れるのも物分かりが良すぎるような気がしてピンとこなかった。

 

 最後は「赤ちょうちん」が流れてエンディングを迎えるのだが、変に編集した中途半端なもので、最後くらいちゃんとフルコーラスで流せばいいのに、と思ってしまった。フルで流すと意味合いが変わってしまうのかなと思い、後であたらためて歌詞を調べて読んでみたら、もう映画とは関係なく、ただ泣いた。

 

スタッフ/キャスト

監督 藤田敏八

 

脚本 中島丈博/桃井章

 

出演 高岡健二/秋吉久美子/河原崎長一郎/長門裕之/小松方正/中原早苗/悠木千帆(樹木希林)/山本コウタロー

 

音楽 石川鷹彦

 

赤ちょうちん

赤ちょうちん (映画) - Wikipedia

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