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「ウーマン・トーキング 私たちの選択」 2022

ウーマン・トーキング 私たちの選択

★★★☆☆

 

あらすじ

 長期に渡って薬物による性的暴行が行なわれていたことが発覚した村で、被害者である女たちは今後の方針について話し合う。

www.youtube.com

 

 2009年に発覚したボリビアでの事件を題材にした小説の映画化作品。105分。

Bolivian Mennonite gas-facilitated rapes - Wikipedia

 

感想

 村の女たちが長期に渡って性的暴行を受けていたなんて、すごい設定だなと思いながら見ていたのだが、あとで実際にあった事件を元にしてると知って驚いた。しかも今から15年ほど前と、思っていたよりも全然最近の、今世紀の話だ。宗教色が色濃いのも宗教的なコミュニティで起きたからだった。

 

 ほとんどのシーンは、話し合いの場である納屋の二階で展開される。大きな動きはほとんどなく、まるで会話劇の舞台のようだ。

 

 

 女たちは、加害者を含む男たちと共に暮らし続けるのか、それとも村を出ていくのか、今後の方針について話し合っている。被害者としての自分や、加害者に対する率直な思いが語られ、そこから次第にジェンダーやコミュニティーの問題などへとテーマが広がっていく。この議論で語られていることは、社会における女性の立場についての暗喩だ。

 

 まるでフェミニズムの歴史を学んでいるかのようだったが、その中で印象的だったのは、女たちの中で対立が生まれてしまうことだ。隷属的な立場で満足してしまっている者もいるし、自由を求めていてもそれぞれの望む手段や速度は違う。それで皆の足並みは揃わず、身内に邪魔されているように感じてしまって、互いに責め合うことになってしまった。内輪もめで運動が停滞してしまうことはよくある話で、これでは相手を利するだけだ。まずは大局を見据えて連帯することが重要なのだがそれが難しい。

 

 "赦し"は時として”許可”と混同されるかも

 

 また、上記の言葉も心に残った。相手の過ちを赦しただけなのに、なぜか相手は認められと思い込み、同じことをくり返すようになることはままある。

 

 単純な感情論がやがて大局的で理性的なものへと変化して、女たちはついに結論を出す。こんな決断を繰り返しながら、そして世代交代も繰り返しながら、少しずつ世の中は変わっていくのだろう。ただ、冒頭で彼女たちが気にしていた天国に行けるのか問題がどうなったのかは気になった。

 

 最後には息子を無理やり従わせようとする母親の姿を描き、常に女が被害者であるわけではなく、時には虐げる側に回ることがあることを示唆している。これはどんな集団でも起き得ることで、性別に限らず年齢や出身、経済力など、その時に目についた差異を理由にして、人々を虐げる者と虐げられる者に分けてしまう。だから本当はたゆまぬ努力が必要なのだが、すぐにみんなサボってしまうので、それを無くすことはとても難しい。

 

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 サラ・ポーリー

 

原作 Women Talking: The Oscar-winning film starring Rooney Mara, Jessie Buckley and Claire Foy (English Edition)


製作総指揮

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エミリー・ジェイド・フォーリー/リン・ルチベッロ=ブランカテッラ

 

製作/出演 フランシス・マクドーマンド


出演 ルーニー・マーラ/クレア・フォイ/ジェシー・バックリー/ジュディス・アイヴィー/ベン・ウィショー/シーラ・マッカーシー

 

ウーマン・トーキング 私たちの選択 - Wikipedia

 

 

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