★★★★☆
あらすじ
顔が変形して生まれ、手術を重ねてきた少年は、新学期と共に学校に通い始める。
感想
顔が変形して生まれてきた少年が、学校に通い始め、家族の心配をよそに友人を作りたくましく成長していく姿が描かれる。この手の映画は主人公の苦労する様子だけが描かれがちだが、この映画は周囲の人間にもちゃんとスポットライトが当てられているのが良い。
特に両親が主人公のことばかりを心配し、あまり構ってもらえず疎外感を感じている姉の姿がちゃんと描かれているのが良かった。仕方がないとどこかで諦めつつも、関心を持ってもらえないことにいじけている。だけど彼女も弟のことを愛し、心配もしていて、一筋縄ではいかない家族の姿をよく映し出している。
主人公が、皆に奇異の目で見られ距離を取られながらも、少しずつ自分の居場所を確立していく様子には胸が熱くなる。しかし欧米は見知らぬ他人との接し方、社交マナーが、定型として子供にまで浸透しているのはすごい。話しかけられたら礼儀正しく振る舞い、折を見て自己紹介をする。これまでほぼ家族としか接してこなかった主人公も、これがあったから皆と仲良くなるきっかけを掴めたと言えるだろう。
そして同級生が言っていたが、奇異に思えた顔も結局は接する機会が増えれば気にならなくなる。最初は顔にばかり気を取られていた同級生たちも、やがては主人公のキャラクターに注目するようになった。だから主人公が楽しい学校生活を送れるようになったのは、彼の良いキャラクターがあったからだと言えるだろう。結局、重要なのは内面だ。
とはいえ彼は今後、大学に進学したり会社に入社したりと、人生の新しいステージに進むたびに、今回と同じ体験をくり返さなければいけないわけで、しんどいだろうなと同情してしまう。周囲の人間が主人公に自身を重ねて勇気づけられたりしているが、絶対彼らよりハードモードな人生を送らなければいけないだろう彼と自身を安易に結びつけるなんて、ずいぶんと都合が良いなと思わなくもない。
だがそれは見ている観客にも言えることで、それが少し引っ掛かってしまうのだが、それでも主人公と家族、同級生らとの愛ある交流は、心をじんわりと温めてくれた。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 スティーブン・チョボスキー
原作 ワンダー
出演
オーウェン・ウィルソン/ジェイコブ・トレンブレイ/マンディ・パティンキン
音楽 マーセロ・ザーヴォス