★★★☆☆
あらすじ
犯罪者としての裏の顔を持つ男は、平凡なサラリーマンを装って勤務している会社の不祥事を知り、乗っ取りを企てる。131分。
感想
勤めている会社の乗っ取りを目論む男が主人公だ。だが彼はその前に会社とは関係なく、現金強奪などの犯罪を行なっている。つまり会社になにか恨みがあるというわけではない。たまたま自分の勤めている会社の不正を知ったから、今回はそれをネタに強請ってやろうとしているだけだ。だから、彼がなぜ何度も犯罪を行うのか、その動機がよく分からなかった。
単純に、彼が楽して大金を稼ぎたいと思っているだけの、いわゆる普通の犯罪者であるのなら、わざわざ会社勤めをするはずがない。スリルを味わう娯楽としてやっているようにも見えなかった。彼の動機に対する何か納得できる説明が欲しかった。映画を見ていて何となく感じられたのは限りない欲望というやつだった。欲望よりも渇望と言った方がしっくりくるかもしれない。
そして主人公がなぜ銃の扱いに長けて戦いに強く、犯罪に関する知識も豊富なのかも説明されない。この辺りは演じているのが松田優作なんだから察してくれということなのだろう。それでもそれなりの説得力があるのはさすがだが。得体のしれなさが滲み出ていた。
それから主人公に会社の情報を流す重役の愛人役の風吹ジュンが色っぽくて良かった。彼女をもっと見たかったが、あまり出しすぎてウェット感が出ると映画のハードボイルドな空気が壊れてしまうと危惧したのかもしれない。
主人公にピンチらしいピンチがないままに、一連の出来事にだいたいのケリがつく。そのままエンディングに突入するのかと思いきや、ここから主人公が部屋で一人暴れて咆哮するなど「普通じゃない映画」感を出すための演出が続く。
やりたいことはなんとなく分かるし、意味するところも分からないでもない。それに、それなりの見応えもあって悪くはなかったのだが、上映時間が二時間を越えてしまっているので、そんな事やらずにもう終わっても良くない?と思ってしまう自分がいた。
スタッフ/キャスト
監督 村川透
製作総指揮/出演 角川春樹
出演 松田優作/風吹ジュン/千葉真一/成田三樹夫/小池朝雄/岸田森/佐藤慶/真行寺君枝/岩城滉一/阿藤海/トビー門口/山西道広/中島ゆたか/南原宏治/待田京介/久米明
音楽 ケーシー・D・ランキン