★★★☆☆
あらすじ
かつて人斬りと恐れられ、今は蝦夷地で開拓を行う男は、生活が行き詰まり、古い知人に誘われて賞金稼ぎの旅に加わる。
渡辺謙主演、柄本明、柳楽優弥、忽那汐里ら出演。1992年のハリウッド映画「許されざる者」のリメイク作品。135分。
感想
かつて人斬りとして恐れられた男が主人公だ。冒頭で、蝦夷地に逃れた主人公が追手を皆殺しにするシーンがあるのだが、これが何が起きているのだか、さっぱり分からなかった。
その後に詳しく言及するシーンがあるし、クライマックスを盛り上げるためにも敢えてぼかしているのだろうが、もうちょっと分かるように匂わせて欲しかった。掴みとしても、その後の伏線としても失敗している。
主人公は、死んでしまったアイヌの妻の言葉を守り、今は真面目に生きていたが、開拓は行き詰まっている。生活に窮した彼は、古い知り合いに誘われ、女郎を傷つけた農民を討つ賞金稼ぎの話に乗ることにした。ただ彼は、もう人殺しはしないと誓っており、同行するだけで何もしないつもりでいる。知人がそれでもいいと言っているのでいいのだろうが、本当にそんなのでいいの?と思ってしまった。
途中でアイヌの血を引く若者も加わり、目的の町に到着する。そこには町を支配する警察署長がいて、騒動を阻止したい彼と対立することとなる。クライマックスの対決シーンはそれなりに見応えがあったが、あまりこの署長に悪役らしさが感じられなかったのが惜しまれる。彼に冷酷で横暴な面があるのは確かだが、町の治安を守ろうとする姿勢自体は間違っておらず、そこまで悪い人ではないような気がしてしまった。
時代の変化や年老いたことで、またアイヌといった出自や女郎といった職業で、社会から置き去りにされている人たちの思いや、過去の行いに向き合う主人公、時代に適応できてしまっている自分に苛立つ署長など、さまざまな人間模様が浮かび上がってくる物語だ。柄本明演じる老年の男が、本当のことを打ち明けて泣くシーンには心動かされた。
情感たっぷりの音楽には興ざめするが、役者陣の熱演、美しい風景、構図の決まった映像など、大作感溢れる映画だ。だが、思っていたほどには心に響くものはなかった。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 李相日
脚本 デヴィッド・ウェッブ・ピープルズ
出演
柳楽優弥/忽那汐里/小池栄子/近藤芳正/滝藤賢一/小澤征悦/三浦貴大
音楽 岩代太郎
撮影 笠松則通
関連する作品
リメイク元のオリジナル作品

