★★★★☆
内容
安田財閥を築いた安田善次郎の伝記。
感想
とんでもない財産を築いた人だというのにあまりその業績を知らない、もっと言えばその名前を憶えているかも怪しい、というのは、彼が金融の世界で成功をおさめたからなのかもしれない。金融の世界は分かりづらい。その世界でこんな風に財産を築いたと言われても、正直半分もそれを理解できていない。よく考えれば身近で誰にとっても大事なお金なのに、それの事がよく分からないというのも不思議な話だ。
金持ちの務めとも考えられている慈善活動に対する彼の考え方はなかなか勇気のあるものだ。適当に頼まれるままに寄付していれば、普通に世間から好意的に受け入れられただろうにそれをしなかった。もっと大局的に本当に効果が見込まれるものにしかそれをしようとしなかった。金融の世界で成功した人ならではの考え方なのかもしれない。
だが大局的なものの見方には、普通の人には簡単に理解できないところもある。政治家からあてにされ、お国のためにとリスクを承知で引き受けた仕事にすら、世間からは冷たい目で見られてしまう。だけどそれを恐れないところが凄い人だなと感心する。
彼の最後が殺害されたというのも驚きだった。そんな大金持ちでもそんな最後が待っているのかと。だがそれもどんな人も拒まなかった彼の性格から来るものだろう。それがあったから金持ちになることが出来たともいえる。そして何よりも驚くのが彼のそんな悲惨な最期を世間は冷ややかに見ていたという事。酷い話だ。いつの時代も庶民は金持ちを妬むものだなと。情けないが仕方ないのかもしれない。
著者
北康利
登場する人物
安田善次郎/高橋是清