★★★☆☆
感想
車が主人公の物語。人間が車内にいる時の出来事や会話は情報として入ってくるが、車を降りて別の場所に行ってしまうと何が起きているかわからない。その代わり他の車との会話で別の情報が入ってくる。人間が主人公の場合とは違った形で話が展開していく。なかなか面白い仕組みだ。
それで面白かったかと言うと微妙ではある。ちょっと話が長すぎた。これがもっとコンパクトなサイズだったら良いアイデアで面白かったと言えたかもしれない。大体中盤でストーリーは見えていたので、後は車が詳細を徐々に知っていくというパターンで長いな、と思ってしまった。色んな話が交錯するし、伏線も散りばめられているしで伊坂幸太郎らしくはあったのだけれど。
伊坂幸太郎は本当にいやらしい悪人を描く。殴ったり盗んだりする単純明快な悪人ではなく、読んでいて本当に嫌な気分になるような悪人を。
恐らく朝日文庫初の伊坂幸太郎作品だと思うが、カバー裏に描き下ろし小説を入れたり、イラスト付きチラシを付けたりして気合が入ってる。確か「SOSの猿」の時の中公文庫もそうだった。
著者