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「苦役列車」 2011

苦役列車 (新潮文庫)

★★★★☆

 

著者

bookcites.hatenadiary.com

  

 日雇労働で日銭を稼ぐ青年の日々。

 

 金がなくなるまで動こうとせず、稼げばすぐに使ってしまう。家賃は滞納するし踏み倒す。ダメなところばかりだが、同情できることもある。父親の犯した罪によってもう自分はまっとうな生活はできないと思い込んでしまったところ。実際ここでは誰かにそのことで嫌な思いをさせられたわけではないけれど、小学生のころにそんな事件に出会ったら何かあるたびにそのせいだと思い込んでしまうのも理解できないわけではない。それが劣等感の始まりだったとしても。

 

 だけど、やはり普通に友人と会話を楽しんだり恋人も欲しい。だけど、その表現の仕方が下手くそすぎる。繊細で相手の感情に敏感に反応して、自分を守るために急に悪態をついたり醜い行動に出てしまう。プライドが高いともいえるけどやはり劣等感を感じて馬鹿にされたくないと思っているんだろうな。中卒の人とか聞かれてもないのに俺中卒だけど、みたいなことを自ら切り出して、自慢みたいなよく分からないことを話し出す人がいるけどあれもコンプレックスとか反発心とかが入り乱れてわけわかんないことになってんだろう。

 

 そういった状況にいて、普通の人ならただわけわかんないことになっているだけなのにこの著者はその心理をいちいち冷静に分析出来るだけの力があるのがなんだか空恐ろしい感じもする。逆にじゃあなんでもっと上手くやらないんだという気持ちにもなる。

 

 そんな明日をも知れぬような生活をしている彼が同時に収められた短編で何年か後には状況が好転することに少し安堵する。

 

苦役列車 (新潮文庫)

苦役列車 (新潮文庫)

 

苦役列車 - Wikipedia

 

 

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