★★★☆☆
内容
短編集。「甘い復讐 / 永遠とドラゴン / さくらの結婚 / ある芸者の証言 / 十階建てのラブストーリー / 余生」収録。
感想
表題作は、思い込みが激しく、過剰に反応して勝手に怒り狂い、残酷な仕打ちをして一人で笑っている、そんなひとりよがりの主人公による復讐。仇討みたいに皆が共感できるものではなく、どちらかというとなんでそこまで怒ってるの?と思うような。実際はそれなりにひどい仕打ちを受けているのだが、そんな印象を受ける。
でも本当の恨みつらみなんてその人にしか分からないし、復讐のやり方も人それぞれだから、それはそれで人間らしい。
最後の私小説的な「余生」は、この著者は色々なものをさらけ出していくスタイルなのだなというのが、よく分かる。さらけ出さないと気が済まないというか。そして膨らんだ妄想やどうにもならない苛立つ現実を、文章にぶつけて解消していくスタイル。小説家になって正解かもしれない。
割と長めの「十階建てのラブストーリー」はちょっと読むのがしんどかったが、あとはまぁまぁ面白かった。
著者