★★★★☆
あらすじ
引退を決意したリア王は、自身を褒め称える長女と次女に領土を分割して与え、追従の言葉を口にしなかった三女は追放してしまう。シェイクスピア四大悲劇の一つ。
感想
引退して可愛い娘たちにあとを譲り、面倒を見てもらいながら余生を過ごそうとしていたリア王に起きた悲劇。ただ、王は娘たちに邪険にされて気の毒な人だ、とはあまりならない。娘に厄介になっているにも関わらず、威張り散らしてわがまま放題で、厄介だなと、どちらかというと娘たちに同情してしまう。
老け込んで耄碌してしまったという事なのかもしれないが、そもそもお世辞を言わない三女を追い出したり、諫める家来をクビにする時点で、あまりリア王は立派な人間ではなかったのかなと思ってしまった。王に同情するというよりも、それでも忠誠心を見せる家来たちに感心してしまう。
権力が追従に身を屈するとき、忠節が恐れて口を閉ざすとでもお考えか。
p15
それにしても、娘たちの態度に怒り狂い、怒鳴り散らすリア王の言葉がキレッキレで笑ってしまった。まるで関西人の「奥歯ガタガタ言わせたろか」みたいな罵り言葉が連発される。きっと舞台でやったら大うけなのだろうなと容易に想像できる。それ以外にも、したり顔で引用したくなるような、グッとくるセリフが次々と出てくる。
一つ気になったのは、妾の子供に騙されてしまう王の家来の間抜けっぷり。王にクビにされてしまった同僚が変装して現れても、誤解して追い出してしまった長男が身分を偽って登場しても全く気付かない。いくら何でも節穴過ぎるだろう。そう思っていたら本当に節穴にされてしまったが。でも他の人間たちも全く気付かないので、そういう世界観という事なのだろう。
最後はバッタバッタと人が死んでいく。リア王はじめその多くは因果応報だと思えるし、その家来はそんな王に仕えてしまったからというので仕方がないと思える部分はある。唯一、本当に父親の事を想っていた追放された三女くらいは幸せになって欲しかった気もするが、それだとあまりにも都合が良すぎるという事なのかもしれない。人生はままならない。だから悲劇も起きてしまうという事なのだろう。
著者
ウィリアム・シェイクスピア
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