★★★★★
あらすじ
年頃を過ぎても嫁に行かない一人娘を気にかける父親。
キネマ旬報ベスト・ワン作品。
感想
原節子がいつもニコニコ、というよりニヤニヤしているだけに、怒るとめちゃくちゃ怖く見える。ただ怒っているだけではなくて、それ以上の尋常じゃない何かがあるような凄みがある。
この時代の男は、25歳ぐらいでおじさんになっているイメージがあるが、逆に女は少女のままだ。それだけ女を閉じ込め、世間知らずにさせておいたということなのかもしれない。そんないい歳した娘に、自分の再婚の話を汚らわしいと思われる父親も辛い。
父親にそんな汚らわしい事をさせないためにも、嫁に行かず父親の世話を続けようと考える娘と、寂しくなるが娘のためには嫁に行かせなければならないと考える父親。本当はこのままの暮らしを続けたい父娘の思いは一緒なのに、娘が嫁いで離ればなれになるのが正解という所に、この父娘の話の悲哀がある。
登場する鎌倉や京都の風景、昔ながらの日本家屋を眺めながら、日本は美しい良い所だなとしみじみとしてしまった。育てた娘を嫁に出す虚しさを父親が友人に語るシーンで挿入される、竜安寺の庭園の映像だけでなぜだか泣きそうになってしまった。
父と娘の複雑な心情を淡々と描きながらも、それだけじゃなく、ちゃんと笑いも織り交ぜられていて凄い。
スタッフ/キャスト
監督/脚本
脚本 野田高梧
原作 「父と娘」 廣津和郎
出演
原節子/月丘夢路/杉村春子/青木放屁/三宅邦子
撮影 厚田雄春
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