★★★★☆
あらすじ
結婚の話が浮上した20代後半の女性と、同居する両親、兄夫婦とその子供たちとの物語。
キネマ旬報ベスト・ワン作品。
感想
妹の結婚話に気が気でない兄。未婚者と既婚者に分かれて強がりを言い合ったりして笑う主人公とその学生時代の友人たち。時おりコミカルなシーンを織り交ぜながら進む展開で、非常に満足しながら観ていた。
両親が出かけた先で二人並んで座り、子供、孫とともに暮らしている今が一番いい時かもしれないな、とつぶやく姿にしんみりとしてしまった。確かに自分が築いた家族にとって、そういう時期というものがあるのかもしれない。いつも当然のように一緒にいるように思えても、いつかは皆、風船のようにそこから離れて遠くに行ってしまう。もうすぐそんな幸せな時間が終わることに気づいてしまうことは、とても切ない。そして、今が一番いい時だと言いながらも、母親は今も戦争から戻ってこないもう一人の息子が帰ってくるのを待っている。
主人公が結婚を決めてきた時の家族の反応が想像と違って、あれ?となった。てっきり自らの意志で結婚を決めたことを喜ぶのかと思ったのだが、相手が再婚でしかも子持ちなのが不満ということなのか。時代が違うから感覚も違うのだと納得しようとしたが、考えてみれば、こっちは初婚なんだから相手も初婚じゃないと可哀想というのは今もあるのかもしれない。
両親が築いた家族の幸せな時間は終りを迎え、それぞれがまた新たな家族を築き、繰り返されていく。
スタッフ/キャスト
監督/脚本
脚本 野田高梧
出演 原節子
淡島千景/三宅邦子/菅井一郎/東山千栄子/杉村春子/二本柳寛/宮口精二/佐野周二/谷よしの
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