★★★☆☆
あらすじ
引きこもり生活を続ける男が、過去のある出来事を綴る。別邦題「地下室の手記」。
感想
若き日の主人公の行動が読んでいて痛々しい。他人を見下しており、勝手に激怒して相手すら気づかないような復讐をしたり、決意した行動を結局行わなかったり。従僕人を手懐けられず、娼婦相手に長々と説教をしたり、招待しておいて来るのを恐れたり。何より主人公が自身の行動を冷静に分析できてしまっている点に、悲しさを感じてしまう。そしてそんな主人公と似ている部分がないこともない自分に気づく。
科学が何でも解決してくれるという期待がこの時代は極端に高まっていたことが窺い知れる。そして人間は科学が示す合理的な行動に従うなんてことはなく、時として自ら不幸を選び、それに酔いしれる事もあるという主張には頷けるものがある。
著者
登場する作品