★★★☆☆
あらすじ
妻子ある男と長年暮らす女の前に、かつて付き合っていた男が現れる。
感想
断片的なシーンが続き、登場人物たちはぼそぼそと語り、なかなか状況が読み取れなかったが、次第に彼らの置かれた状況が浮かび上がってくる。
いつまでも続けられるわけない関係をだらだらと続ける二人。習慣は恐ろしい。他人のことなら簡単に非難できるのだが、自分の事となると分かってはいるのだけど・・・と煮え切らない態度になってしまう。時々決断を迫られるような出来事に出くわすが、自ら言い訳したり気づかないふりをしたりしてはぐらかしてしまう。不意にかかってきた本妻との電話でのやり取りでの、何とも言えない空気が印象的。
映し出されるこの頃の日本家屋は、薄暗くも美しい。原色のものが見当たらないからだろうか。いい具合に和洋が調和しているように感じる。原色のものは、店先では客寄せの役割を果たすが、家の中では悪目立ちしてしまうのかもしれない。
主人公の女性は自分の仕事を持ち、自活していた。女も自分で金を稼ぐことができれば、男と同様に好きなように行動ができるということでもある。男が事業に失敗して自殺するにしても、男に頼るしかない状況ならば、女は運命をともにするしか選択肢がなくなってしまう。自分一人でも生きられると考えているからこそ、思うがままに行動できるといえる。
スタッフ/キャスト
監督 熊切和嘉
原作 夏の終り (新潮文庫)
製作 藤本款/伊藤和明/越川道夫/深瀬和美/穂山賢一
出演 満島ひかり/小林薫/綾野剛
音楽 ジム・オルーク