★★★★☆
あらすじ
ニューヨークに一人でやって来た男は、滞在初日に貴重品の入ったバッグを盗まれてしまう。
感想
自意識が過剰な主人公。後できっとしっぺ返しを食って、恥ずかしい思いをするからはしゃがないし、何かを演じる自分を誰かに気づかれないかと恐れてもいる。だからニューヨークに浮かれ過ぎて窃盗にあったなんて思われたくないがために、バッグを盗まれたときも追いかけることすら出来なかった。
しかし人生とは何かを演じ続ける舞台であるとも言える。家にいれば家族の一員として振る舞うし、職場に行けば立場に応じた振る舞いをする。それは何かを偽っていると言うよりも、その場が円滑に進むように皆が協力しているだけと言うこともできる。皆がいつどんな時も本当の自分とやらで接するようになったら、とんでもない状況が生まれてしまうだろう。
自分が様々な場で何かを演じていることに気付いて意識してしまい、さらには自分の舞台の観客じゃない他人まで意識してしまうと、自意識過剰になってしまう。どちらにしろ何らかの演技をするわけだから、自分なりの演技をすればいいということなのかもしれない。
演技にだって色々ある。より多くの観客を引きつけるための大きな動き、派手な衣装の舞台演劇、感情の微妙な揺れを僅かな表情の変化や動きで見せる映画での演技、観る者に評価を委ねるような難解な前衛舞台の演技、相手の言動を想像して動く一人芝居。周りをよく見れば、皆それぞれ演技の方法は違う。演技の上手い下手もある。そう考えると少しは楽になれるし、自然体なんて言ってないで積極的に演技していこうと思えるかもしれない。
主人公の言動をすべて理解できるわけではないが、共感してしまう刺さる部分が何箇所も出てきてドキドキしてしまう。
著者
登場する作品