★★★☆☆
高田馬場の決闘を機に知り合った丹下典膳と堀部安兵衛が、一人の女性を存在によって数奇な運命に翻弄される。
セリフは聞き取りづらいが、吉良邸討ち入りに向かう冒頭のシーンや橋の上での決闘シーンなどクールな映像表現が随所に見られる。
高田馬場の決闘から生じた様々な因縁が、二人の人生を大きく変えていく。しかし丹下典膳の妻に対する態度はあまり理解できない。妻が乱暴されたのに妻が悪いみたいな捉え方は、インドあたりでたまに聞くニュースのような考え方。本人的には、世間体や武士としての面目など色々、思い悩んではいるようだが。
最後の片腕で足も怪我をした瀕死の主人公・丹下典膳が地面に這いつくばりながら敵と対決するシーンはちょっと凄い。相手も相手で、そんな人間に大勢で襲いかかるなんて、人としてどうなんだと非難を浴びそうではある。とはいってもそんな相手に負けているのだが。
ところでこの映画のチャンバラシーンで少し違和感を感じていたのだが、理由は効果音が入っていないからだった。効果音を入れるようになったのは黒澤明の「椿三十郎」からなのか?
堀部安兵衛演じる勝新太郎は、目がクリクリして可愛らしいが、とっちゃん坊やみたいであまりカッコ良くはない。彼は歳を重ねてカッコ良くなっていったのか。人間には色んなタイプがある。
忠臣蔵ならクライマックスとなるシーンの直前でエンディングを迎えるという、秀逸な構成。勿論その結果は知っているので、この物語と忠臣蔵の映画を観られたような、2度美味しい展開になっている。
監督 森一生
原作 薄桜記 (新潮文庫)
出演 市川雷蔵/勝新太郎/真城千都世/三田登喜子/大和七海路