★★★★☆
あらすじ
ひき逃げされて死んだ妻のために、復讐を果たそうとする男。
感想
堺雅人演じる妻を亡くした男。いつも髪はぼさぼさ、汗だくの作業着で、外見に気を配れない、生きる気力を失っている感を出しているのだと思うが、あまりにもベタでちょっとコント感が出てしまっている。堺雅人の押し殺した演技が時にコミカルにすら見えるものだからなおさら。でもこのあたりは少し狙っているのかもしれない。
復讐ものというともっと憎悪の炎を燃やしているようなメラメラとした熱があるものだが、ほぼそんなものは感じられず、ただじっと内に籠もっているだけ。ほぼ感情を出さず、悲しいとも悔しいとも許さないとも口に出さない。でもそれが逆にリアル。何かやらかしそうな雰囲気が出ている。きっと簡単に「復讐」なんて口に出す人間は、結局はそれを行動に移さないものなのかもしれない。
それに対するひき逃げ犯役の山田孝之。なかなかの悪者ぶりではあるのだが、そこまで悪いやつだったっけ?とちょっと意外な感じもある。単純に不注意で事故を起こし、小心から逃げたどこにでもいそうな男と思っていたのだが。
最初は何かウラがあるのかと訝しんでしまったが、主人公にお節介とも言えるような思いやりを見せる義兄、いつもヘラヘラして何も関心がないようなふりをしながらも実は主人公を心配している従業員たちなど、孤独なようでいてきっと誰かが見守っていてくれるものである。
彼らを演じた役者陣の演技も良かったが、なかでもホテトル嬢役の安藤サクラが堺雅人と共に延々と下着姿で演じるシーンは面白かった。
最後の主人公のやることやってケリがついたようなひと区切り感、だからといって妻が戻ってくるわけでもないやるせなさ、様々な思いが交錯するなんとも言えない表情が印象的。
スタッフ/キャスト
監督/脚本/原作 赤堀雅秋
出演 堺雅人
新井浩文/綾野剛/坂井真紀/田口トモロヲ/谷村美月/安藤サクラ/でんでん