★★★★☆
あらすじ
武術の町で最強と敬意を払われ余裕のある生活を送っていた武闘家が、勃発した日中戦争の影響で苦しい生活を強いられることになる。ブルース・リーの師匠として知られるイップ・マン(葉問)の物語。
感想
日中戦争で日本軍に占領された町での、日本の軍人との戦いがクライマックスに据えられているので、日本人としては観ていて気まずい。最初は日本で公開されなかったのも理解できる。ただ日本人全体を悪役として描いているわけでなく、あくまでも一部の日本人に悪いやつがいた、という形にしているので、そこまで不快感はない。
前半は日中戦争が始まる前の様子が描かれる。武術が盛んな街で、武闘家たちが集まっているわけだから、皆が殺気立っているのかと思ったらその逆で、皆礼儀正しく穏やかなのが意外だった。毎日暴れまわるのもしんどいし、結局純粋に強さだけを追求していくと、人間は謙虚になるものなのかもしれない。謙虚でなければ強くなれないというか。
そして、そんな中で最強と言われるイップ・マンも君子のような人物。演じるドニー・イェンの顔を把握していなかったので、あまりにも善良な雰囲気の彼が主役とは最初全然気づかなかった。普通の映画なら破天荒な主役を支える、真面目なサブキャラといった所だが、それはそれで新鮮だ。
日中戦争が始まり、町が占領され苦境に陥るイップ・マン。占領する日本軍の将軍が武闘家で、中国の武闘家との交流を望んでいるという設定。将軍自体は礼節を重んじ彼らを対等に扱おうとするが、部下が暴走したり、対する中国人の往生際が悪く、結果中国人に酷いことをしているというイメージになってしまっている。
イップ・マンも同様に怒りを覚え、やがて将軍との一対一の試合を行うという流れ。日本人じゃなかったら最高!という展開だが、でもそんなに悪くない映画だった。イップ・マンが強いのは当たり前として、人間的な部分をクローズアップした映画となっている。
ただ、結局怒りにまかせて相手を叩きのめすのは、武闘家としてどうなの?という気はした。相手が「参った」と負けを認めなかったからと言うことなのだろうが、「参った」と言える余裕を与えなかったズルさを感じないこともない。
スタッフ/キャスト
監督 ウィルソン・イップ
出演 ドニー・イェン/サイモン・ヤム/池内博之/リン・ホン/ラム・カートン/ルイス・ファン/渋谷天馬
アクション指導 サモ・ハン・キンポー
関連する作品
次作