★★★☆☆
あらすじ
文化大革命で農村に送られた少女は、そこで出会った青年に恋をする。事実を基にした物語。
感想
若い男女の純愛物語だ。主人公は体制に目を付けられている元資産家一家の長女で、父親は矯正施設に送られ、母親は周囲の監視の中、貧しく肩身の狭い思いをしながら幼い子供たちを育てている。
二人は農村で出会い、町に戻った後も密かに会い続ける。人目を気にしながらそれでも会わずにはいられない、といった様子の二人の姿は初々しかった。
親密さを増していく二人だったが、ある時主人公の母親に見つかり、会うことを禁止されてしまう。だが、母親も怒ってそんなことを一方的に言っているわけでないことが見てて取れるので、切ないものがある。本当は娘が悲しむようなことを言いたくはないが、これがバレて自分のような惨めな人生を送らせるわけにはいかない、との親心だ。まずは人並みの生活を手に入れさせることを最優先に考え、心を鬼にしている。
真面目に約束を守っていた主人公だが、男が病気になったとの噂を聞きつけ、居ても立っても居られなくなり病院に駆けつける。久しぶりに再会した二人は、ここで一夜を共にする。だがその関係はとことんプラトニックだ。それなのに後で主人公が真剣に妊娠の心配をしていたのは可笑しかった。性教育の大事さを実感する。
やがて男の病気は進行し、二人に悲しい別れが訪れる。純愛で悲恋とは典型的な、と思ってしまうが、実話を基にしていると言われてしまうとなんにも言えなくなる。青さとノスタルジーを感じるラブストーリーだ。
そして様々なエピソードに文化大革命の影響が見られる映画でもある。たとえ結果は同じだったとしても、この時代でなければ二人は人目を気にすることなく、もっと会えていただろうし、もっと楽しい思い出も作れていただろうにと気の毒になる。だがよく考えると文化大革命がなければ二人が農村で出会うことはなかったわけで、皮肉な人生の綾を感じてしまう。
きっと誰の人生だって時代や政治の影響を受けている。別の時代や政治下であったならまた違う人生になるのだろう。人生の不思議を感じる。
スタッフ/キャスト
監督 チャン・イーモウ
原作 「山楂樹之戀」 エイ・ミー
出演 チョウ・ドンユィ/ショーン・ドウ/リー・シュエチェン/チェン・タイシェン