★★★☆☆
あらすじ
富豪の家に生まれた男は、一人の女性と出会いやがて結婚するが、次第に関係がギクシャクしはじめる。実際に起きた事件にインスパイアされて製作された映画。
感想
上流階級の家に生まれながらも、その暮らしに馴染めない男。幼い時に母親の自殺を目の当たりにした心の傷も抱えている。普通の家庭で育った娘と出会い、家業を手伝えという父親の意に反して、郊外に小さな店を持ち二人は結婚する。
ここまでは良かった。馴染めない上流階級の社会から距離をおき、厳格な父親の影響下から逃れ、援助を受けたとはいえ自らの店を持ち、愛する女性と自分なりの人生を築いていこうとした。
しかし、今のままではいつかきっと彼女を失うという父親の言葉に唆されて、それまでの生き方を捨てて、家業を手伝い始める。ここから、すべてがおかしくなっていってしまった。ここがその後起きたすべての出来事の出発点だったと言える。結局運命は変えられない、自分も父親のようになってしまうのではないかという恐れもきっと現実のものになってしまう、という無力感が彼の中で芽生えてしまったのかもしれない。
そして、その事が彼女の妊娠を機に二人の間にも影を落としていくことになる。彼女を失いたくないがために下した決断が、やがて二人を苦しめるようになったというのが切ない。あのまま小さな店を続けていたら、きっと幸せな家庭を築けていたはずなのに。
その後に起きた事件は破綻した夫婦のありがちな事件とはいえるが、関わった人間が富豪ということで世間の注目を集めたのだろう。しかし、疑わしくはあるが未解決の事件を、こんな風に映画にしたことがすごい。
この映画の公開後、モデルとなった事件は解決したそうだ。この映画の中では、主人公が独り言をつぶやいているシーンが何度か出てくるが、実際の事件は本人の漏らした独り言がきっかけとなって解決したという。それを予期していたかのようなこの演出もすごい。
スタッフ/キャスト
監督/製作 アンドリュー・ジャレッキー
出演 ライアン・ゴズリング/キルスティン・ダンスト/フランク・ランジェラ/クリステン・ウィグ/フィリップ・ベイカー・ホール/ダイアン・ヴェノーラ