★★★☆☆
あらすじ
イタリアの小さな村に春の訪れを告げる綿毛が舞い、浮き立つ住民たち。アカデミー賞外国語映画賞受賞。
感想
全体として大きなストーリーがあるわけではなく、住民たちの日常のワンシーンを切り取って積み重ねたような映画となっている。面白い話、悲しい話、不思議な話、切ない話と様々なエピソードが展開される。どのエピソードも単純明快な分かりやすい話ではなく、中にはよく意味のわからない話もある。
ただそれらのエピソードに共通して感じられるのは、人々のたくましさだ。何があってもへこたれず、なんとか笑っていようというようなポジティブな精神が感じられる。そして、住民たちが常に集い、互いに関わり合っているのが印象的だ。
様々なエピソードの中でも印象深かったのは、近くの海を通るという豪華客船を見るために、皆で沖に繰り出したシーン。長い時間待って夜の海にようやく現れた豪華客船は、その圧倒的な大きさと照明の光で、まるで奇跡が訪れたかのような幻想的な光景だった。
そしてよく考えてみると、冒頭の綿毛が舞うシーンに始まり、周りが見渡せなくなるほどの霧のシーンや雪のシーン、新しくやって来た娼婦たちを夢心地で見送るシーン、街の人が踊りだすシーンなど、どこか幻想的で美しいシーンが多い。人生を振り返り過去を思い出す時は、こんな風にフィルターが掛けられるものなのかもしれない。
春が過ぎ、夏、秋、冬と季節が巡り、その間に住民たちには様々な出来事が起きた。しかし、また綿毛の舞う春がやってきて、皆は笑顔を浮かべている。こんな風に時は過ぎ、人生は重ねられる。長い人生、つらいことや悲しいことは当然起きるが、それでも楽しく生きられたらいい、というか、生きるべきだ、と言われているような気になる映画だった。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 フェデリコ・フェリーニ
出演 ブルーノ・ザニン/マガリ・ノエル/プペラ・マッジオ/アルマンド・ブランチャ/チッチョ・イングラシア
音楽 ニーノ・ロータ
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