★★★★☆
あらすじ
新作映画の制作を発表するも全くアイデアが浮かばず苦悩する映画監督。
フェデリコ・フェリーニの「8 1/2」をミュージカル化した舞台の映画化作品。
感想
ミュージカル作品だが、想像するような賑やかに楽しく歌い踊るというものではなく、苦悩する監督と周りの女たちが想いを吐露するという、言ってみれば少し地味なミュージカルとなっている。最初の音楽が流れ、登場人物たちが歌いだしそうで歌いださないシーンは少しイラっとした。
大元となったフェリーニの「8 1/2」を観ていたので、それを思い出しながら観ていると、良く分からない部分も多かった「8 1/2」の理解が進むような感じもあって味わい深い。
苦悩する映画監督と元女優の妻、愛人、母親、主演女優、友人の衣装デザイナーといった様々な女たちとの関係が描かれる。映画監督がモテることが良く分かる。そんな女たちを演じる女優陣は豪華で、とくにソフィア・ローレンやジュディ・デンチのベテラン勢の貫禄はすごい。二人は同い年で当時は70代半ばだが、そんな風には見えない。映画に安定感をもたらしている。
「8 1/2」同様、断片的で抽象的なシーンが多いが、印象的なシーンも多い。バーで出会ったケイト・ハドソン演じる雑誌記者が独自の解釈で作品を絶賛しているのに、監督がそうかな?そんなことが描かれているの?とことごとく否定するシーンは皮肉が効いていたし、気心の知れたジュディ・デンチ演じるベテランの衣装係と監督の気の利いた会話のシーンは面白かった。映像も華やかで、特にモノクロの映像は美しかった。
比較的おとなしい映画でフラットな気持ちで見ていたのだが、撮影する監督の背後に関わった女たちが一人ずつ登場するラストのシーンは、静かに盛り上がっていく感じでなかなか良かった。映画は監督自身のこれまでの人生が反映され、当然彼と関わりのあった女性たちの影響は間違いなく大きい。その事を表現している。
万人受けはしなさそうで他人に薦めるのは躊躇われるが、個人的には割と気に入った作品だ。
スタッフ/キャスト
監督/製作 ロブ・マーシャル
脚本 アンソニー・ミンゲラ/マイケル・トルキン
出演 ダニエル・デイ=ルイス/マリオン・コティヤール/ペネロペ・クルス/ジュディ・デンチ/ファーギー/ケイト・ハドソン/ニコール・キッドマン/ソフィア・ローレン
撮影 ディオン・ビーブ
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元となったミュージカルの原作