★★★☆☆
内容
緑溢れる自然は人間にとって重要かもしれないと考えた著者が、世界各地で行われている人間と自然に関する研究や取り組みを現地で視察し、科学的な成果を交えながら紹介する。
感想
最初に日本の「日光浴」が紹介されているように、日本人にとっては自然は人間に重要なもの、というのは普通にすんなりと受け入れられるような気がするのだが、欧米ではそうではないのだろうか。どこの国にも自然賛歌のような歌や文章があるような気がするのだが。
著者が話を聞いている科学者たちの中には、自然の効能を認めていない人がいて、そちらのほうが意外に感じた。決定的な科学的な研究成果がないから「科学的」には認めていないだけならまだ理解できるのだが、もし感覚的にもわからないというのならちょっと理解できない。
ただ読んでいてよく分かるのは、自然の効能を証明するのは実は結構難しい、ということだ。自然の中で数日過ごして気分がリフレッシュできたから、やっぱり自然は心身にとって良いものだと感じるかもしれないが、それはもしかしたら、単純に嫌な上司や同僚と顔を合わせて仕事をしなくて良いからかもしれないし、野山を歩き回って運動したせいかもしれない。となると分かるのは「ストレスフルな仕事は体に悪い」だったり、「運動は体に良い」でしかなくて「自然が体に良い」ではないかもしれない。
それに単純に「自然」と言っても、空気は澄み、遠くに雄大な山々が見え、近くには小川のせせらぎが聞こえるような爽やかな自然から、植物が腐ったような匂いが漂い、ヤブ蚊が飛び交う澱んだ自然まで色々ある。そんな中では簡単に自然は良いとは言いづらいかもしれない。単純に実験室での外では、再現可能な実験が難しいという問題もある。
「ほかの国では、仕事に適した人材を雇い、その人が燃え尽きてしまったら、新たな人材を雇えばいいのかもしれない。でもここでは人材を手放すわけにはいかない。だからこそ、社員には幸福でいてもらわなければならないの」
p189
日本はこの分野の研究ではトップにいるらしいが、エコとしてではなく健康のための緑化という政策を採用された話は聞いたことない。わざわざ言うまでもなくやっているからなのか、そういう先を見越した戦略を立てていないからなのか。人口が少なく労働人口に限りのあるフィンランド人の言葉が何故か眩しく感じてしまう。
戦争でPTSDを負った元女性兵士たちを自然の中の過酷な環境で過ごさせる取り組みなど、世界各地で行われている活動の中には興味深いものもあった。しかし、「自然は人間にとって重要かもしれない」という最初の問いが、「自然は人間にとって重要なようだ」という結論を導き出しただけなので、正直驚きはなく、そうだろうなという事柄の連続で、全く内容としては刺激的ではなかった。
著者
フローレンス・ウィリアムズ
登場する作品
The Organized Mind: Thinking Straight in the Age of Information Overload
The Birth of Korean Cool: How One Nation Is Conquering the World Through Pop Culture
History of Friedrich II. of Prussia, Called Frederick the Great Volume 9
Happy City: Transforming Our Lives Through Urban Design
ザ・ソプラノズ 哀愁のマフィア オリジナル・サウンドトラック
A Handbook Of Ophthalmic Science And Practice
The Sense of Sight (Vintage International) (English Edition)
Unknown Soldiers (Penguin Modern Classics)
Hallaig and Other Poems: Selected Poems of Sorley Maclean
Recollections of a Tour Made in Scotland 1803 (Classic Reprint)
*「高慢と偏見」