★★★☆☆
あらすじ
離婚して幼い娘と離れて暮らす漁師の男は、ある日の漁で仕掛けた網に一人の女性が入っているのを発見する。
アイルランド映画。原題は「Ondine」。111分。
感想
漁師が若い女性を釣り上げるという、出だしから現実離れした展開だ。その割にはどこか主人公が淡々としているというか、冷めている。陰鬱なアイルランドの光景が、そう見えるようにさせているだけかと思ったが、そういうわけではないようだ。どこかでこの出来事を受け入れることにためらいを感じている。
そんな父親を尻目に、無邪気にこの不思議な出来事を楽しんでいる娘が可愛らしい。人魚伝説になぞらえて、ワクワクした様子でこの物語の行く末を見つめている。
主人公はどこかで良いことばかりは続かない、その後には必ず悪いことが起きる、だから幸せなことなんて起きてほしくない、と思い込むようになってしまっている。相当過酷な人生を歩まなければ、そんな心境にはならないはずで、映画の中で多くは語られないが、あちこちにそれを偲ばせるような状況が散らばっている。娘の病気、禁酒、元妻との関係など、どこか不吉な過去を感じさせるものばかりだ。
そんな主人公の話し相手になる神父がいい味を出している。懺悔という形を取りながらもほぼカウンセリングで、ジョークを交えながら主人公をサポートする。主人公に主導権を握られているのが面白いが、それすら許容して見守っている。
主人公が分かっていたように、良いことの後には悪いことがあった。それでも目の前に幸せが転がっていたら、それから逃げずにちゃんと拾い上げようとしたエンディングの主人公の姿に、温かな気持ちになる。
スタッフ/キャスト
監督/脚本/製作 ニール・ジョーダン
出演
アリシア・バックレーダ/スティーヴン・レイ/ドン・ウィチャリー/キャリー・クロウリー/アリソン・バリー/エミール・ホスティナ
撮影 クリストファー・ドイル