★★★☆☆
あらすじ
結婚のためにピアノと共にニュージーランドにやって来た口の聞けない女は、近所に住む男の家にピアノを教えるために通うようになる。
原題は「The Piano」。カンヌ国際映画祭パルム・ドール受賞作。
感想
会ったこともない男と結婚するために、主人公がイギリスから遠く離れたニュージーランドまではるばるやって来るというスケールの大きさにまず驚かされる。隣近所の誰かじゃ駄目だったのだろうか。
初めて顔を合わす二人。当然ぎこちないわけだが、新郎は主人公である新婦がわざわざ持ってきたピアノを放置し、挙句の果てには勝手に土地と交換して手放してしまう。そんな事をしたら不信感を持たれるし、嫌われるのも当たり前の話だ。新郎の気がしれないが、妻のものは自分のもので、どうしようが自由だ、と考える時代だったということなのだろう。
そして主人公は夫に命じられ、元は自分のものだったピアノを手に入れた男の家に、演奏を教えに行くことになる。最初は男に反感を持つ主人公だが、やがて二人は恋に落ちてしまう。こういうのを見ていると、単純に何度も顔を合わせていれば、簡単に男女というものはくっついてしまうものなのだなと思い知らされる。運命とかではない。
実際、サム・ニール演じる夫も、妻との間に距離感を感じてはいたが、一緒に暮らしていればそのうち打ち解けるだろうと楽観視していたし、彼の親類たちもそう思っていた。見合い結婚とかもそういうことなのだろう。だから逆になんで男のもとに妻を通わせ二人きりにさせたのか、不思議ではある。自分の事業の事で頭が一杯で、さらに妻の倫理観を信じたということか。
本当は秘めたる愛に静かに燃える男女と、その背後に流れる沁みわたるようなピアノの旋律に心を動かされるのかもしれないが、個人的にはその後のそれを知った夫の激しい逆上ぶりにドン引きしてしまった。そこまでするかと。このまま怒り狂うのかと思ったら、その後の変心ぶりもなんだか怖い。サイコパス感があった。
陰鬱だが美しい映像が、映画の格調高さを支えている。特に海辺のシーンはどれも印象的だった。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 ジェーン・カンピオン
出演 ホリー・ハンター/ハーヴェイ・カイテル/サム・ニール/アンナ・パキン
音楽 マイケル・ナイマン
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