★★★☆☆
あらすじ
1963年のブロンクス。人種や民族ごとに徒党を組む若者たちの中で、イタリア系のワンダラーズは、黒人グループと決闘することになる。
感想
冒頭の主人公らが敵のグループに追いかけられて、町中を全力疾走するシーンが良かった。いかにも青春映画らしいスタートだ。少し「トレインスポッティング」を思い出した。
移民の多い街、ニューヨークのブロンクスが舞台だ。イタリア系の主人公らのグループ、ワンダラーズは、黒人グループのデル・ボマーズとひょんなことから揉め、決闘をすることになる。このきっかけとなったのが学校の授業だったのだが、なぜ教師が互いの対立を煽るようなことをしたのかが謎だった。敢えて現実を直視させた上で人権教育をしようと思ったのかもしれないが、あまり賢いやり方には見えなかった。
主人公らはその他のグループとも小競り合いをしているのだが、あまり緊張感はなく、どこか牧歌的なのどかさを感じてしまうようなものばかりだった。黒人グループとの決闘にしても、銃もナイフもなし、と協議の上決められており、騎士道精神やスポーツマンシップのような健全さが感じられる。
終盤の決闘シーンに至るまでの過程も、悲壮感が漂う暗いものではなく、主人公らは何事もないかのように明るく若者らしく過ごしている。そこで描かれるのは、恋愛、友情、バカ騒ぎ、家族の問題、将来への不安など、まさに青春映画の定番のものばかり。それを洒落たファッションにノスタルジックな映像、タイミングよくかかるセンスの良いオールディーズの音楽が盛り上げる。ストーリーとしては少し物足りなさを感じてしまうが、雰囲気の良さで心地よく見ることができる映画だ。
この映画は主人公らの青春と共に、アメリカという国の青春時代を描いているとも言える。そしてケネディが暗殺され、若者はベトナム戦争へと駆り出され、その終焉がやってきたことを示唆している。主人公の青春も、アメリカの古き良き時代も終ろうとしていることを告げるように、ボブ・ディラン(を演じる男)がライブハウスで唄っていた「The Times They Are a-Changin'(時代は変わる)」が心に染みた。
楽しい時代が永遠に続くことはなく、いつか終わりがやってくる。そして新たな時代が始まる。祭が終わった後のような、一抹の物悲しさを感じるほろ苦いラストだった。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 フィリップ・カウフマン
出演 ケン・ウォール/ジョン・フリードリック/カレン・アレン/トニ・カレム/ジム・ヤングス/トニー・ガニオス/アラン・ローゼンバーグ/ドルフ・スウィート/ウィリアム・アンドリュース/アーランド・ヴァン・リス/リンダ・マンズ/マイケル・ライト/サム=アート・ウィリアムズ/ヴァル・エイヴリー
撮影 マイケル・チャップマン