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「薄化粧」 1985

薄化粧

★★★★☆

 

あらすじ

  爆破事件、妻子の殺人容疑で警察に取り調べを受けるも、脱獄して各地を転々と逃亡する男。

 

感想

 炭鉱夫として働き、妻子とともに暮らす主人公。大勢の仲間が落盤事故で死ぬと、先頭に立って会社と戦うような男だったのに、大金を掴まされてあっさりと懐柔されてしまう。そして、事故による負傷や夫の死で生活に困るものに金を貸して弱みを握り、その女には手を出すようになる。金は人を変える、というベタな教訓が思い浮かぶが、ちょっとしたきっかけさえあれば簡単に人は変わってしまうという事だろう。

 

 しかしそんなやりたい放題も、妻に愛人の存在を知られたことから調子が狂い始める。怒り狂う妻をもみあいから殺害してしまう。なかなかショッキングな殺害シーンだが、ラジオを使った演出でうまく中和しているのが見事だ。ここから、さらに主人公の行動はエスカレートしていく。

 

 

 最終的に彼が捕まったのは、手を出そうとしていた同僚の娘が炭鉱の実力者と結婚してしまい、腹いせにその家を爆破したことだが、もうやってる事が最低すぎる。仲間のために戦っていた正義感の持ち主とは思えぬ身勝手さだ。

 

 ちなみにその娘は松本伊代が演じている。この人が主人公を誘惑するシーンは、つい吹き出してしまう面白シーンだった。演技がひどいからかと思ったが、その後はそうでもなかった。松本伊代が登場すると空間が歪むような、一瞬チープな、コントの空気が流れるような気がするのは何なのだろうか。不思議だ。

 

 その後、脱獄して逃亡し、各地を転々とする主人公。人目を憚り、孤独に過ごす必要があるせいか、自らの罪を悔い反省する様子も見せている。やはり人間には一人孤独で過ごす事も必要なのかもしれない。気づかないふりをしていた自分の気持ちにも向き合わざるを得なくなる。

 

 そんな逃亡生活で出会った一人の女。やっぱりどこか影のある男はモテるのだなと再認識させられるわけだが、一人の時間を多く過ごし人間的に成長した男といじらしい女のやりとりは切なかった。

 

 主人公演じる緒形拳の人間味あふれる演技が全編を通してとても良い。調子に乗ったり浮かれたり、沈み込んだり怒ったりとどれも良い表情を見せてくれる。そして、浅野温子や藤真利子といった登場する女たち、刑事役の川谷拓三の演技も良かった。

 

スタッフ/キャスト

監督 五社英雄

 

原作 薄化粧 (文春文庫 (369‐1))

 

出演 緒形拳/浅利香津代/川谷拓三/大村崑/藤真利子/小林稔侍/菅井きん/萩原流行/笑福亭松鶴/浅野温子/松本伊代/竹中直人/柳沢慎吾

 

薄化粧

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薄化粧 - Wikipedia

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