★★★☆☆
あらすじ
性格が悪く疎まれてはいるが才能は認められていた絵師が、時の権力者に地獄絵図の屏風絵を書くよう依頼される。宇治拾遺物語 「絵仏師良秀」をアレンジした作品。
感想
絵師の芸術への執念を描いた作品。ストーリーは何となく知っていたので驚くことはなかったが、すごい結末ではある。
ただ絵師もすごいが、それよりもすごいのはそれをセッティングした堀川の大殿様だろう。そんな状況を思いつく残忍な想像力と、実際にやってしまえる権力。人柱とかがあった時代の話だから今とは人の命の重さが違うのかもしれないが、それでも身近な人間を殺そうとするなんて中々できることではない。尋常じゃない絵師を諫めるためとの言い訳もあるが、全然それを止められるタイミングは用意されていなかった。
短い物語ですさまじい物語ではあるが、シンプルに芸術至上主義を描いているのではなく、絵師の娘に起きた事件や当日大殿の横に侍る男など色々と意味深な場面が存在していて、深みのある物語となっている。娘に懐いていたサルの取った行動も印象的だった。
純粋に絵を描くことに情熱を燃やし、身内を犠牲にすることも厭わない絵師。しかし絵から離れてしまえば性格は悪いが、家族を思う普通の男で、自分のしたことに対して自ら決着をつけた。それに対しそんな状況に追い込みながらも何事もなかったかのように過ごす大殿や噂話の一つとしてそれを楽しんでいる周囲の人間たち。考えようによっては彼らも相当怖いかもしれない。結局、人間は恐ろしい、ということか。
著者
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アレンジの元となった作品
「絵仏師良秀」
*所収
映画化作品
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