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「愛怨峡」 1937

愛怨峡

★★★★☆

 

あらすじ

 温泉宿の若旦那の子供を身ごもり、一緒に駆け落ちした女中。しかし、男は連れ戻され、身重のまま一人東京で生きることになってしまう。タイトルの読みは「あいえんきょう」。

 

感想

 白黒の古い映画でかなり画質が悪く、音声も聞き取れない部分があるが、次第に慣れてくる。80年前の街の風景や、車窓からの田舎の風景に見入ってしまう。

 

 主人公と恋仲になった勤め先の宿の若旦那は、彼女が身ごもったことを父親に切り出せず、思い切って駆け落ちしても知り合いの家に居候しただけで、働こうともしない。居場所を知った父親がやって来ると、女を置いて喜んで一緒に帰ってしまう。いかにも老舗のお坊ちゃんといった無責任で身勝手な甘えた生き方だ。

 

 

 しかし、多少のお金は渡されたとしても、置き去りにされた身重の主人公はたまらない。生まれた赤子は里子に出して必死に働く。恋人にけなげに寄り添うしとやかだった女性が、2年後にはあけすけにものを言える女給に変わってしまったのも無理はない。その二年間に何があったかは敢えて描かない演出は上手い。描かなくても察しはついてしまう。そして、その変わりようをちゃんと演じられている主演の山路ふみ子も見事だ。

 

 辛い時に励ましてくれたアコーディオン弾きの男と再会し、成り行きでコンビを組んで旅回りの漫才師となる主人公。なかなかすごい展開だなと思ったが、男はアコーディオン弾きだし、女の母は同じような旅芸人だったので、流れ的にはそこまで唐突ではないのか。

 

 主人公は、里子に出していた子供も引き取ることができ、旅回りを続ける。たっぷりと漫才も見せてくれてなかなか興味深かった。今の漫才よりも随分と芝居がかっている。この時代の漫才を見られるというのはなかなか貴重な体験だ。

 

 やがて主人公たちは、彼女を捨てた男の地元を訪れて公演することになる。男にも再会するが、既に吹っ切れている主人公は取り合わない。しかし、漫才の相方を務める男の思いが絡まって、そこから二転三転していく。

 

 ラストは一抹の切なさも感じさせるが、それよりも女のたくましさが強く印象に残る。主人公の生き生きとした姿を見ていると80年前とはいえども、今の自分たちと何も変わらないのだなと感じた。前半にはコミカルな部分も多く、古い映画ではあるがちゃんと楽しめた。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 溝口健二

 

脚本 依田義賢

 

出演  山路ふみ子/河津清三郎/清水将夫/三桝豊/浦辺粂子

 

愛怨峡

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愛怨峡 - Wikipedia

 

 

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