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個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「226」 1989

226

★★☆☆☆

 

あらすじ

 1936年に起きた「二・二六事件」を描く。

二・二六事件 - Wikipedia

 

感想

 映画開始と共に一気に226事件に突入していく。彼らが次々と要人たちを襲撃する様子は凄まじい。しかし、こういう人たちは何かと天皇の名を持ち出す。直接本人に意思を確認したわけでもないのに、勝手に代弁したつもりになっているのは相当ヤバい。まるで自分の意思ではないように振る舞うところもズルい。

 

 要人たちが殺されていく中で、その家族が必死に将校たちにすがり付く姿が印象的だ。確かに自分の家族が殺されそうになっているのに、黙って見過ごすことなど出来ないだろう。

 

 

 映画で触れられているわけではないが、教育総監・渡辺錠太郎が殺されたシーンで、それをすぐ近くで見ていた幼い娘が、後にベストセラー「置かれた場所で咲きなさい」を書いた渡辺和子なのかと感慨深かった。彼女は6年前に亡くなったが、この事件をこんな間近で目撃した人物が、つい最近まで存命だったことに驚いてしまう。この映画が公開された34年前なら、彼女ほどではないにしろ、リアルタイムでこの事件を経験した人たちはもっとたくさんいたはずだ。

 

 今年は戦後78年。戦争体験が記憶として残っている世代の多くは、このを去ってしまった。そういう時代になって再び軍事力強化をやりだすなんて、よく出来ているというか、わかりやすいというか、皮肉を感じてしまう。結局人類は歴史ではなく、体験からしか学べないのだなと痛感する。もしかしたら人類ではなく、日本人に限った話なのかもしれないが。

 

 物語は、薄暗く物憂げな陰鬱な映像の中で進行していく。首謀者たちの表情を影で隠し、いくら崇高な理念があろうとも、やっていることは薄暗いものであることを暗示している。また彼らの周辺の妻や恋人といった女性達を登場させ、物語に深みを与えようともしている。それらの演出は評価できる。

 

 だが、最初の30分で事件の主要な部分を描いてしまい、その後は延々と長いエピローグをやっているだけの状態になってしまっているのはいただけない。計画失敗の気配が濃厚になり、あきらめムードがまん延する中で盛り上がらない議論をしたり、断念して原隊に戻すことにした部下たちを前に、将校それぞれが演説をする似たようなシーンが繰り返されたりするだけだ。特に見どころはなく、物語の結末が既に見えているのになぜかなかなか終わろうとしない謎の時間が続く。

 

 出オチ感の強い、バランスの悪い映画だ。序盤にクライマックスを持ってきて、その後をどうしたかったのかがよく分からない。普通に事の発端から時系列に沿ってじっくりと描いて欲しかった。主役の萩原健一にほとんど見せ場がなかったのも不満が残る。

 

スタッフ/キャスト

監督 五社英雄

 

製作 奥山和由

 

出演 萩原健一/竹中直人/加藤昌也/鶴見辰吾/南果歩/名取裕子/本木雅弘/有森也実/隆大介/八千草薫/加藤武/川谷拓三/金子信雄/田村高廣/渡瀬恒彦/松方弘樹/鈴木瑞穂/高峰三枝子/藤谷美和子/丹波哲郎/芦田伸介/仲代達矢/勝野洋/佐野史郎/うじきつよし/隆大介/宅麻伸/関口誠人/石橋保/今井雅之/三上寛/三遊亭小遊三/坂田明/賀来千香子/安田成美/根津甚八/久我美子/高松英郎/大和田伸也/長門裕之/小野寺昭/高部知子/ガッツ石松/梅宮辰夫/(声)井川比佐志

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撮影 森田富士郎

 

226

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  • 芦田伸介
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