★★★☆☆
あらすじ
ガンで余命が幾ばくも無いことを知り絶望するが、自殺する勇気がなく、殺し屋に自身の殺しを依頼する芸人。84分。
感想
初めてがっつりとカラーで動いている坂本九を見たが、ツルツルだと思っていた肌の質感とかが全然違って意外だった。映画館の大きなスクリーンで観たら結構インパクトがあるかもしれない。とっちゃん坊やというか、童顔で可愛らしいイメージだったが、後ろ姿なんてそこらにいそうな普通のおじさんだった。
ただ、朗らかで親しみの持てるキャラクターであることは間違いない。逆にこのキャラクターが、彼のビジュアル的なイメージに下駄をはかせていたといえる。ちなみに伊東四朗や三波伸介ら芸人たちも出演しているのだが、まじまじと見てみると皆いかつい顔をしているし、どことなくヤクザな雰囲気が漂っていてなんか怖い。これもいつもニコニコしている姿に騙されてしまっているという事なのかもしれない。
芸人の話という事で、主人公である坂本九が舞台で歌って踊ったり、コミカルな出し物をするシーンがあり、まさにエンターテイメント映画だ。今見るとそんなに笑えるわけではないが、きっと当時は映画館で大いにウケて、観客の日ごろの憂さを晴らすのにもってこいだったのだろう。
流行りの曲のモノマネもしているようだったが、そういう時事ネタを織り交ぜているところも大衆娯楽映画ぽい。坂本九は実はそんなに歌は上手くないのかなと思っていたが、この映画内では普通に上手かった。
クライマックスは殺し屋を巻き込んでのドタバタ劇だ。ただ本当にドタバタしているだけで、笑いは薄かった。この中で、外国人役の男たちが外国語で喋るシーンを妙に長々とやっていたのは何故なのだろう。当時は外国人自体が珍しかったので、聞き慣れない外国語が耳に可笑しく響いたという事だろうか。
その後の、舞台の股旅姿のままで劇場を飛び出し、現代の町を走り回る画は面白かった。確か映画「幕末太陽伝」で、監督の川島雄三はこんなことをやりたかったそうだが、やっても全然ありだったなと感じた。
エンディングは、「市民ケーン」みたいだったオープニングにつながるような、上手い締めくくり方だ。でもコメディ映画にしては、ちょっと物悲しすぎるような気もした。
スタッフ/キャスト
監督/脚本
原作 「消えた動機」 三木洋(小林信彦)
出演 坂本九/倍賞千恵子/竹脇無我/ジェリー富士夫/佐山俊二/E・H・エリック/大泉滉/渡辺篤/左卜全/三波伸介/伊東四朗/谷よしの/犬塚弘/桜井センリ/石橋エータロー/有島一郎*
*特別出演
音楽 山本直純