★★★☆☆
あらすじ
コーンフレークを考案したケロッグ博士が運営する健康療養施設で巻き起こる騒動。
原題は「The Road to Wellville」。
感想
コーンフレークを発明したケロッグ博士が開く健康療養所を舞台にした映画だ。それなりのストーリーはあるが、それよりもこの施設で行われている奇妙な取り組みやそこに集う人たちの生態を観察するのがメインの物語と言えるだろう。面白いというよりもこんなことが行われていたのかと興味深い映画だ。
施設ではアクの強い博士の独自の理論に従い、様々な健康法が実践されている。今でも見かけるようなものからどんな効能があるのかよく分からない健康法までたくさん行われており、生真面目にそれらに取り組む人々の姿はどこか可笑しみがあった。だがきっと現在の我々も、後世の人が見たら失笑してしまうようなことを何か仕出かしているに違いない。
主人公は、熱心な博士の信奉者である妻に連れて来られた男だ。奇抜な取り組みの数々に戸惑い、疑問を感じる様子がコミカルに描かれていく。
この映画では禁欲や浣腸といった下ネタが多いのだが、体内に溜め込むな、すぐに出せと腸内洗浄しているくせに、性欲に関しては我慢しろ、出すなと指導しているのは確かに矛盾がある。これは博士の宗教的価値観が影響しているのだろう。だが、科学的な事実と宗教の教義を混ぜ合わせてしまうような人を博士と呼んでしまっていいのだろうか。
アンソニー・ホプキンス演じる博士は頑固そうでいかにも「オレ流」を貫きそうなキャラクターだったが、それまで築いてきた理論に反する事実が出てきた時にどうするのかを見たかった。見たいものだけを見る人なのか、真実を追求する人なのか、それで分かったはずだ。
一方、熱狂的な信者である主人公の妻は貪欲に健康を求め、やがては博士とは別の人間が提唱する怪しげな健康法にまで手を出すようになる。まるで定説では飽き足らず手当たり次第に情報を求めた結果、陰謀論にハマってしまった人みたいだった。自分の力でたどり着いたものだから価値がある、真実だ、と思ってしまうのだろう。
また、彼女の行動は仲間内でも拒絶反応を引き出してしまっていたが、これはリベラルが一丸になれない理由を表わしているような気がした。進歩的な人たちが集まっても、その進歩具合や進歩の方向はそれぞれ違う。最初はそれでも同じ目的のために頑張ろうとするが、やがて互いの進歩具合に不満が募り、我慢が出来なくなって分裂してしまう。そうやってどんどんと勢力は細分化され勢いを失っていく。
展開されるエピソードがどれも薄味で物足りなさはあったが、主要人物が一堂に会する結末は上手くまとめられていた。あちこちで渦巻いていた欺瞞を昇華させる意味でも悪くない終わり方だった。
スタッフ/キャスト
監督/脚本/製作 アラン・パーカー
原作
製作総指揮 トム・ローゼンバーグ/マーク・エイブラハム
出演
ブリジット・フォンダ/マシュー・ブロデリック/ジョン・キューザック/ダナ・カーヴィ/マイケル・ラーナー/コルム・ミーニイ/ジョン・ネヴィル/ララ・フリン・ボイル/トレイシー・リンド/カムリン・マンハイム/ロイ・ブロックスミス