BookCites

個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「アラブの嵐」 1961

アラブの嵐

★★★☆☆

 

あらすじ

 大手商社の社長だった祖父の遺言に従って世界に飛び出した男は、ひょんなことからエジプトである国の独立運動に巻き込まれる。

 

感想

 エジプトを舞台にしたサスペンスかと思いながら見始めたら、いきなり随分とのん気な内容の石原裕次郎の主題歌が流れてきて脱力してしまった。映画は終始、のん気というか大らかな雰囲気で満ちている。

 

 主人公は祖父の遺言に従い、広い世界を見るために海外に出かける。だが行き先は決めておらず、ただノープランで海外行きの飛行機に飛び乗っただけだ。しかも外国語を使う気はさらさらなくてすべて日本語で返し、外国語で話しかけられると「何言ってるか分かんね」と軽くあしらってしまう。状況が悪くなると、周囲の誰かが助けてくれるまでただブツブツとボヤいているだけの有様だ。まるでお殿様の物見遊山のようなのん気さがあった。

 

 

 これをさすが石原裕次郎、外国でも媚びない動じない、と思うのか、ちゃんと外国の文化をリスペクトして学ぼうとする謙虚さを持てよ、と思うのかで、主人公に対する印象はかなり変わってくるだろう。本当は傲慢すぎず、謙虚になりすぎず、その中間ぐらいでいるのがアウトサイダーにはちょうど良いような気がするが。

 

 エジプトにたどり着いた主人公は、ひょんなことからある国の独立運動に巻き込まれていく。だが、わけもわからず謎の勢力に付きまとわれることに恐怖したり、真相に気付いて重大さに震えることはない。なぜなら、背後にそんな壮大な動きがあるとはつゆ知らず、ただずっと「畜生、僕の盗まれた財布を返せー」と怒っているだけだからだ。

 

 ラストの佳境になって、ようやく主人公は真相に気付く。そんなのんびり具合なので、当然スリルやサスペンスはない。どちらかというと植木等的なお呼びでない場違い感がずっとあった。彼のように道化るのではなく、主人公は大物らしい鈍感さですべてを切り抜けていく。そんな石原裕次郎を楽しむ映画なのだろう。彼が歌うシーンに関しては確かに雰囲気があって悪くなかった。

 

 一件落着したら主人公がそのまま帰国するだけのラストで、結局お前は何しに行ったんだ?と言いたくなる。たまたま商社の仕事につながったとはいえ、あくまでもたまたまだ。最後までのん気さを感じさせるストーリーだ。

 

 物語としては何だかな、と呆れてしまう内容だったが、全面エジプトロケが行われ、様々な名所で撮影されているので観光映画としてはなかなか見ごたえがある。中でも「サッカーラの砂漠」は、SF映画に登場するどこかの惑星のような雰囲気で、こんなところがあるのかと興味深かった。やっぱり一度は自分の目で見てたいなと思わせるような場所がたくさんあった。

 

 それから、芦川いづみ演じるヒロインが探していた父親を、それは無茶だろ、と思ってしまうような人が演じていたのには度肝を抜かれた。いくらなんでも大胆過ぎて笑ってしまった。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 中平康

 

出演 石原裕次郎/芦川いづみ/小高雄二/浜村純/山岡久乃/千田是也/金子信雄

 

音楽 黛敏郎

 

アラブの嵐

アラブの嵐

  • 石原裕次郎
Amazon

アラブの嵐 - Wikipedia

 

 

bookcites.hatenadiary.com

bookcites.hatenadiary.com